研究課題
抗体の抗原に対する高親和性は、抗体遺伝子上に起こる体細胞高頻度突然変異によって向上する。 AIDの発現がこの変異導入に必須であることは示されているが、変異導入装置およびその抗体遺伝子への標的化機構の詳細は不明である。本研究では、抗体遺伝子への変異導入の必須因子として見いだしたRNAスプライシング因子SRSF1のアイソフォーム(SRSF1-3)の機能を、突然変異能を有するB細胞株を用いて解明する。AIDは、スプライシング関連因子と相互作用して抗体遺伝子上の動員されることから、SRSF1-3がAIDと相互作用するか、AIDと相互作用することにより核への動員を促しているかを調査した。HEK293T細胞へAIDとSRSF1-3を共発現させると、AIDとSRSF1-3が相互作用していることが免疫沈降により明らかになった。また、蛍光タンパク質との融合タンパク質を作製して、AIDの細胞内局在性に対するSRSF1-3発現の影響を調べたところ、AIDは通常大部分が細胞質に局在しているが、SRSF1-3の発現により核に蓄積することを見いだした。核に蓄積したAIDがSRSF1-3と共局在していることから、SRSF1-3がAIDとタンパク質複合体を形成することにより核内への蓄積を促進していることが示唆された。一方、HEK293T細胞へAIDのC末欠失変異体とSRSF1-3を共発現させると、AIDとSRSF1-3が相互作用していることが明らかになった。したがって、AIDのC末に依存しない形式で、SRSF1-3と結合していることが示唆される。SRSF1-3はAIDによる変異誘導能を増幅する機能を有するが、核外移行能を欠失するAIDのC末欠失変異体の存在下では、SRSF1-3による変異増幅能力が無効であったことから、AIDの細胞内局在制御を含むSRSF1-3の機能はAIDのC末領域と連携していることを示唆する。よって、SRSF1-3はAIDと複合体を形成しAIDの核への局在を促進することでSHMを誘導していると考えられる。
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