SINEは哺乳類ゲノムに50万コピー以上も存在する150-300bp程度の転移性因子で、その転写産物は非コードRNAであるが、遺伝子発現制御に関わることが示唆されている。これらの因子の遺伝学解析のためには、まず、どのコピーが転写されているのかを同定する必要がある。そこで、本研究ではmiRNAよりは長いがmRNAよりは短い中程度の長さのRNA(meRNAまたはmedium length RNAと呼ぶ)を網羅的に同定する方法を開発し(meRNAシーケンシング)、それを応用して転写されているSINEコピーを同定することを目的として研究を行った。脳、肝臓、精巣のRNAを用いて、meRNAシーケンシング法の開発に成功し、5'末端処理を行った場合のみ、SINE配列を取得することができた。これは、SINE RNAの5'末端を正確に決定できていることを意味する。SINEはサブファミリーによってゲノムコピー数あたりの発現量が異なっており、転移した時期が最近のものほど発現量が多かった。さらに、精原細胞(精子幹細胞)でも同様の解析を行い、すでに公開されている精原細胞のDNAメチル化データと比較したところ、精原細胞で発現しているSINEコピーはDNAが低メチル化していローカスに由来するものがほとんどであることがわかった。次に、DNAメチル化異常となるマウスの精原細胞でmeRNAシーケンシングを行い、DNAメチル化が減少するとSINE発現が上昇することを明らかにした。これらの結果から、SINEの転写がDNAメチル化による制御を受けていることを明らかにした(論文投稿中)。
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