研究課題
沖縄島固有のコバノミヤマノボタン・八重山群島固有のヤエヤマノボタンは隣接する台湾・日本本土産種よりも中国固有シナハシカンボクに最近縁であることを明らかにした。更に、これら3種は湿潤な環境に生育すること、種子分散能力が低いこと、ネットワーク解析から中国→沖縄島→八重山群島の方向となったことより、この種群は琉球列島が大陸と陸続きだった当時に古揚子江など湿潤な環境を伝って琉球進入したことが示唆された。一方、分類見解の再検討を行ったところ、Bredia属と扱うことが主流であったコバノミヤマノボタン・ヤエヤマノボタン・シナノボタンは単系統にまとまるものの、Bredia属の基準種ハシカンボクを含むクレードに含まれなかったとより、Bredia 属から独立したTashiroea属と扱う見解が妥当であることを誌上発表した。琉球列島産、日本本土産、中国産、台湾産の湿潤環境に生育ウツギ属種の系統関係を調べた結果、中琉球の奄美群島固有オオシマウツギと沖縄島固有オキナワヒメウツギは中国産に、南琉球の西表島固有ヤエヤマウツギは台湾産にそれぞれ近縁であることが示された。これらの結果より、オオシマウツギ・オキナワヒメウツギとヤエヤマウツギは独立して琉球列島に進入したこと、前者については古揚子江のような湿潤環境を伝って中琉球に進入した可能性が高いことが示唆された。その他、現揚子江流域と中琉球で隔離分布している可能性のある3種の植物を特定した。以上の研究成果より、中琉球と中国大陸の湿潤な環境に隔離分布し、種子分散能力の低い植物種あるいは種群が複数存在することが示され、それらの分布成立を説明するには両地域をつなぐ古揚子江など陸伝いの湿潤な回廊の存在が不可欠であり、「古揚子江流域は湿潤環境に生育する植物の中国大陸から中琉球への主要な進入経路であった」という仮説は極めて高い可能性をもつと考えられる。
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Phytotaxa
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