研究実績の概要 |
魚類の最深採集記録は、プエルトリコ海溝8,370mとされており、マリアナ海溝8,145mでもその映像が確認されている。一方で浸透圧調整物質の分析では、魚類の生息水深の限界は8,200mにあると推定されている。しかし、8,000mを越える深度域の調査は大がかりな調査船や探査機を必要とするため、十分な調査は行われておらず、魚類の生息水深の限界は未だ解明されていない。そのため、8,400mを越える深度でも、記載されていない魚類が生息している可能性がある。本研究では、比較的安価に開発された海底設置型のランダーシステム「江戸っ子1号」を、伊豆・小笠原海溝8,000~9,200m付近に展開し、魚類の最深生息記録を更新するとともに、試料の採集も試み、圧力耐性に関わる物質の解析から、超深海に適応する生理・生態学的特性を明らかにすることを目的としている。 平成28年度については、当初探査機として利用する予定であった「江戸っ子1号」に不具合があり、当年度中の改造が困難になった。そのため、海洋研究開発機構が所有するミニランダーを当面流用することになった。このミニランダーには、他機関から借用した4Kカメラを組み込むことになっており、当年度に4K映像を再生できるPCを購入した。平成29年度のフィールド調査を行うために、東北海洋生態系調査研究船「新青丸」航海を確保すべくプロポーザルを提出したが、不採択という結果になった。しかしNHKの受託航海として、海洋研究開発機構の深海調査研究船「かいれい」によるマリアナ海溝の航海が平成29年度に予定されたため、この航海に参加すべく準備を行った。また、板鰓類シンポジウムなどにも参加し、超深海における魚類の情報収集をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で用いる探査機については、主にミニランダーを利用することにする。現状では、平成29年に実施されるマリアナ航海で利用できることは決まっているが、それ以外で利用可能かどうかは使用時期や期間による。そのため、自由に稼働できる探査機として、江戸っ子1号の不具合が解消された場合には、これも探査機の一つとして整備する。また、伊豆・小笠原海溝の8,000~9,200m付近における調査を実施すべく、民間の調査船や漁船等の傭船も視野にいれて検討するとともに、引き続き調査プロポーザルも作成し、東北海洋生態系調査研究船「新青丸」等の航海を確保すべく検討する。
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