研究課題/領域番号 |
16K14800
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
土田 真二 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 技術主幹 (30344295)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超深海 / 魚類生息限界 / 海溝 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、調査船「かいれい」によるマリアナ海溝の調査航海(平成29年5月5日-25日)に参加し、マリアナ海溝における魚類の生息限界に関する情報を得るため、ミニランダー(自己浮上式カメラシステム)を投入し、データの取得を行った。ミニランダーの投入は、計3回実施した。1回目および、2回目は、ミニランダーに搭載したトランスポンダによる音響測位の結果から、それぞれ水深8146mおよび7498mに設置されたことを確認した。3回目は、SeaBird社製CTDプロファイラー(SBE-19)の圧力センサーにより計測し、8178mに設置されたことを確認した。1回目は、連続撮影続として6時間24分19秒に渡る海底の映像を記録した。ヨコエビ類などを確認することはできたが、魚類は確認できなかった。2回目は、インターバル撮影とし、3時間毎に59分54秒の映像を記録した。8シーケンス、21時間59分54秒に渡る撮影に成功した。ヨコエビ類やアミ類とともに、マリアナスネイルフィッシュがランダー着底後の3時間39分に出現し始め、撮影終了まで多数確認された。最大、1フレームに6個体確認でき、餌となるマサバに螺集したヨコエビ類を捕食する行動も記録された。3回目もインターバル撮影とし、3時間毎に52分54秒の映像を記録した。12シーケンス、33時間52分54秒に渡る撮影に成功した。ランダーが着底すると、ヨコエビ類がすぐに餌のマサバに螺集し、周辺を遊泳するアミ類も記録された。ランダー着底後、17時間36分53秒に、マリアナスネイルフィッシュの映像を捉えることに成功した。その後最終シーケンスまで出現したが、すべて1フレームに最大1個体しか確認できず、外見から判断できる肝臓の形態から、同一個体であると判断した。これにより、圧力センサーによって深度計測された魚類の最深記録となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、超深海の探査機として利用する予定であった「江戸っ子1号」の不具合により、代替機としてミニランダーを利用することで、本研究を実施することができた。平成29年度には、他の航海に便乗することにより、伊豆・小笠原海溝での調査を予定したが、天候や機器トラブル、スケジュール等の問題により、予定した海域での調査はできなかった。そのため、海域をマリアナ海溝として実施するも、米国およびミクロネシア側との調整が間に合わず、生物試料を得るための手続きを行うことができなったため、映像情報のみの取得となった。結果として、水深8,178mにおいて、魚類の映像情報を取得することができ、これまでに記録のあるプエルトリコ海溝8,370mに次ぐ情報となった。圧力センサーを用いた深度情報としては、これまでの記録から約30m更新する結果となった。しかしながら、生物試料を得ることができなかったため、各種分析を行うことができなかった。そのため、魚類の生息限界に関する情報を得ることはできたものの、その要因に関するデータを得ることができなかった。伊豆・小笠原海溝については、引き続き調査できるよう民間の調査船や漁船等も視野に入れた検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で用いる探査機については、引き続きミニランダーを利用する。また、現状では、江戸っ子1号の不具合も解消されたため、フルデプスの改良はできなかったが、8,000m以浅の調査では利用可能となった。平成30年度については、利用できる船舶等の予定はないが、民間の調査船や漁船等も視野に入れた検討を行い、伊豆・小笠原海溝での調査を目指す。使用船舶の確保ができた場合には、江戸っ子1号でサンプル採集を目指し、魚類の出現情報のある7,000-8,000m以浅での観測を実施、ミニランダーについては、8,200m以深を目標に投入し、圧力センサーの計測による魚類の生息限界に関する情報を取得する。また、試料を得ることができた場合には、TMAOなど浸透圧調整物質の分析も行い、魚類の生理・適応機能について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、試料を採集するための傭船を計画したが、実現にいたらなかったため、平成30年度に実施する調査の傭船費として使用予定である。
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