研究実績の概要 |
C. inopinataはC. elegansと極めて系統的に近いことから、この 種がもつ生態的な特徴の進化的機構をC. elegansでの知見や技術を利用して解明することが可能になる。2種の体サイズの違いに影響する遺伝子を特定するために、C. elegansとC. inopinataの成長を詳しく調べ、最も成長率に差がでるのは、Young Adult期 であった。そこで、L4期後半とYoung Adult期で各種4個体ずつ計16個体のRNAを抽出し、次世代シークエンサーデータベース配列を所得した。この2つの発生段階で、2種で異なる発現パターンを示した遺伝子として、2699の遺伝子を取得した。また、Caenorhabditis 属6種 (C. inopinata C. elegans C. brenneri, C. remanei, C. briggsae, C. nigoni)コード領域を配列比較し、C. inopinata 系統で選択圧がかかった遺伝子をPAMLを用いて検出した。 正の選択を受けた遺伝子として610の遺伝子が検出された。GO解析の結果、発生、転写制御関連の遺伝子が多かった。さらに、RNA-seqによる解析とPAMLの解析で検出された遺伝子を、体サイズに関連することが知られるシグナル伝達経路のパスウェイ上にマッピングした。体サイズ関連のシグナル伝達経路内に、選択圧がかかった遺伝子、発現パターンが異なる遺伝子が複数みられた。 複数のシグナル伝達経路のほぼ最上流に位置する daf-2 遺伝子に、選択圧がかかっていた。daf-2は細胞膜で発現し、インスリンを受容する遺伝子で、 体サイズや寿命に関連することが知られている。インスリン受容体のような複数のシグナル伝達経路の入力部分に関わる遺伝子の変異が体サイズの種間差に効いていることが示唆された。
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