研究課題
ニューギニアヤリガタリクウズムシが生息する父島北部―中部において、ウズムシと共存する外来陸貝の生息密度、生態、行動調査を行った。またニューギニアヤリガタリクウズムシが分布していない父島南部および母島、聟島において同様の調査を行った。その結果、ウスカワマイマイ、オキナワベッコウマイマイ、ミヤコマイマイではウズムシによる影響は認められなかった一方、他の種では影響が認められた。同じ種間では明確な行動上の差異は見いだされなかったが、ウズムシの影響を受けないウスカワマイマイでは、ウズムシの攻撃に対し、殻を利用して排除することがわかった。ウズムシの誘引性は陸貝種間で差は認められず、忌避物質の存在は確認できなかった。しかしウズムシの攻撃に対して耐性の高いミヤコマイマイとウスカワマイマイでは、粘液量が他の種に比べ多いことから、粘液が攻撃に対する忌避効果として機能している可能性がある。以上のことから、活動性の高さと粘液量がウズムシの攻撃を緩和する行動上の特性であることがわかった。固有種ではノミガイ類、エリマキガイがウズムシの影響が比較的軽いことが明らかになったが、明確な忌避物質の存在や防御に関わる行動特性は観察できなかった。成体のウズムシに対して小型であることがその攻撃の回避に関係している可能性があるが、ウズムシの幼体は小型種も攻撃すること、ウズムシの有無による殻サイズの違いも認められなかったことから、その影響の違いは明らかではない。繁殖能力の違いがその要因である可能性もある。 ウズムシのインパクトにさらされているカタマイマイの脆弱性の理由はある程度示されたが、その影響緩和の方策を示すことは容易ではないことがわかった。長期的には粘液量の多い個体を選抜して耐性のある個体を作出することも野外復帰の手段となりうるだろう。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Molluscan Studies
巻: 84 ページ: online
10.1093/mollus/eyy003