研究課題/領域番号 |
16K14810
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮竹 貴久 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80332790)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 概日リズム / アクトグラフ / 活動性 / コクヌストモドキ / モンカゲロウ / アリズミック / 交尾行動 / 遺伝様式 |
研究実績の概要 |
野外(岡山県)より採集したコクヌストモドキの集団、及び35年以上も室内で累代飼育されたコクヌストモドキの集団から任意に個体を抽出して赤外線ビームによるアクトグラム装置によって概日リズムの測定を行った。また本種における概日リズムの有無の遺伝性を調べるためにリズムの有る個体と無い個体の交配実験を行い、F1およびF2個体を得て概日リズムを解析したところ、本種の概日リズムの有無の遺伝様式は単純なメンデル遺伝ではなく、F1世代の独立やF2世代の分離が明瞭には見られなかった。これら測定できたデータについて概日リズムの有無の解析手法を精査したところ、概日リズムの有無を解析する場合には、従来の統計学的手法での比較には問題があることが判明したため、時系列解析法および画像解析手法の導入について検討した。 またコクヌストモドキのリズムの有る個体とリズムの無い個体をアクトグラフの解析結果より識別を行ったうえで、両者の交尾行動について観察した。測定した形質は、交尾スピード、交尾持続時間、求愛行動(ラビング行動)、およびマウント行動である。その結果、リズムの有無と交尾行動の間には、調べた範囲では有意な関係性が見られなかった。 コクヌストモドキの野外集団として、全国から20か所以上のコイン精米機よりコクヌストモドキの成虫をサンプリングし、概日リズムの解析を行っている。さらにコクヌストモドキの近縁種であるオオツノコクヌストモドキ(属は異なる)の近交系統について、異なる温度環境下での概日リズムの解析を行っている。その結果は、アリズム個体とリズム個体の表現型可塑性の遺伝として、現在データを取りまとめているところである。さらにフィールドのモデルとして、モンカゲロウのリズムと交尾の関係についても研究を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リズムを持つ個体とアリズミックな個体を識別して、交尾行動や繁殖戦略を比較する予定であったが、統計的に両者を識別する手法として、従来の統計学的手法を用いることに問題点があることが判明し、活動記録データについて新たな解析および統計手法を検討する必要が生じたため。
|
今後の研究の推進方策 |
アクトグラフによって得られた活動性のせ織田からリズムの有無を識別する際に、新たな数学的解析手法および統計的解析手法が必要であることが判明したため、共同研究者を2名追加し、問題点の検討および解決をすすめて研究を推進することとした。一名は時系列解析の専門家であり、コクヌストモドキの地域集団や累代飼育集団、およびオオツノコクヌストモドキの近交系系統について、アクトグラフで取得したデータを動く・動かないという二形質値を時系列として解析を進める。も1人は画像解析の専門家であり、アクトグラフ解析の結果の画像としてとらえて解析する。またリズムと交尾の関係を研究対象とするフィールドモデルとして、モンカゲロウの群飛が生じるタイミングとリズム、および交尾行動の関係についても新たに研究課題として追加し、リズムとアリズミックの関係が配偶システムに及ぼす影響についても解析する。その際に群飛のダイナミックな動きを記録するために専門の昆虫写真家の協力も仰いで、包括的にリズム・アリズムと適応の研究を開拓する推進方策である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コクヌストモドキの活動性のデータを取得したが、リズムの有無を従来の統計的手法で解析することに、解析上の難点が見つかった。解析方法を新たに展開するために、今年度は新たな共同研究者の模索に時間を費やしたために、次年度使用額が生じた。模索した結果、新たな分担研究者(二名)を加え、解析のための分担金を配分し、研究計画を遂行する予定である。またリズムとアリズムが配偶システムに及ぼすモンカゲロウの観察を開始する準備にも手間がかかり、次年度使用額として使用計画する運びとなった。
|