緑色糸状性光合成細菌Chloroflexus aggregansが優占化し、主要一次生産者として働いていると考えられる温泉微生物群集について、メタトランスクリプトーム解析を実施した。昼夜の転写物を取得し、HiSeqシステムによるRNA-Seq解析で比較したところ、光合成が活発になる昼には、C. aggregansの炭酸固定酵素の転写量が増加していることが確認できたとともに、硫黄酸化に関わる遺伝子の転写物も検出された。このことからC. aggregansは温泉水から供給される硫化水素を電子源として光合成生育していると考えられた。また、微生物群集では、硫黄不均化反応が進行していることが生化学的解析から示された。 そこで、同一の温泉から分離されていた硫黄不均化細菌Caldimicrobium thiodismutansとの共培養によるC. aggregansの生育を試験した。二酸化炭素を唯一の炭素源とする条件で、両者の生育が確認された。共培養系では、硫黄不均化細菌による硫化水素の供給と元素硫黄の消費が進行していると考えられた。C. aggregansは硫化水素を酸化して元素硫黄を生成するが、元素硫黄の蓄積はC. aggregansの生育を抑制する。共存する他種細菌が、電子源として硫化水素を供給するとともに元素硫黄を除去することで、C. aggregansの酸素非発生型光合成による独立栄養生育が支えられると考えられた。
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