本研究では、硫化鉄鉱物から構成される深海熱噴出孔が「化学・熱・電気エネルギーの変換場」として働くことを示した申請者らの研究に基づき、電気化学代謝計測を海洋微生物-底生動物複合系に適用し、異種生物の相互作用により生成する電流の計測、ならびに電位変調による代謝制御を行うことを目的としている。 最終年度、人為的に鉱物材料の電位を制御した際、海洋底生動物(Oligochaeta)の代謝活性ならびに行動がどの様に変化するのかについて解析を進めてきた。その結果、鉱物材料の電位を正にすることでTCAが活性かし、一方、電位を負にすることでフマル酸呼吸が活性化することを見出した。また、電位の正と負に応じて底生動物の運動性が大きく異なることを見出した。すなわち、電位を正にすることで、底生動物は底質に対して尻尾を海水側に出すのに対し、電位が負の場合には、底質に潜り体全体を底質の中に沈める。また、これらの行動性の変化は、電位の正負の切り替えに対して可逆的に変化することを確認した。以上の結果は、底生動物の代謝さらには運動性を、電位という物理化学パラメーターを用いて可逆的に制御することが可能であることを示した最初の報告である。
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