研究実績の概要 |
本研究は、次世代シークエンスによる16S rRNA遺伝子の大規模解析からその存在が明らかになったものの実体の分かっていない「レアバイオスフィア(稀少微生物)」、とりわけ未踏の微生物分類グループ「微生物暗黒画分」の生態生理を解明するため、申請者自身が近年開発した未培養微生物群の機能同定法「超高感度安定同位体プローブ法(Stable Isotope Probing[SIP])を自然環境中で見られる微生物群集の異なる栄養段階(好気代謝、嫌気呼吸、食物連鎖等)へ適用する。これにより、これまで我々の理解が及ぶことの無かったレアバイオスフィアの全貌をあぶり出すことを目指す。2019年度は、「微生物食物連鎖」を対象として、超高感度SIPの適用によりコンポスト中で13C標識細胞破砕物を分解する未知微生物群を複数同定することに成功した。さらに、これらの微生物群は病原菌の指標である大腸菌に対して当該の基質競合で勝ることが明らかになった。コンポスティング過程の初期において病原菌の大幅な減少が観察されているが、今回見出された未知微生物群による旺盛な細胞破砕物の分解がこれに大きく寄与していることが強く示唆された。これらの成果を環境科学のリーディングジャーナルであるEnvironment International誌にて発表した。またこれまでに得られた超高感度SIPの成果(1,4-ジオキサン分解菌の同定および代謝様式解明等)をもとに、海外大学での特別セミナーや国際会議での発表を行った。
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