研究課題
本研究では、遺伝子発現現象からその機能を紐解く“生物版リバースエンジニアリング”を実現するため、基質誘導による機能遺伝子発現解析(SIGEX:Substrate Induced Gene Expression)を応用し、転写因子など機能遺伝子群の一部を遺伝子誘導を通じて捉えて未知遺伝子機能を特定すること、およびメタゲノムを初めとする大規模シーケンスデータまたはデータベースによる解析では特定困難な遺伝子機能を明らかにすることを目的とする。平成29年度には、平成28年度に確立した手法を用いて構築したメタゲノムライブラリーを用いた実験を実施した。メタゲノムライブラリーに対して遺伝子発現誘導を行い、緑色蛍光の増加がみられたクローンを選択的かつ高速に分取して培養を行い、基質誘導クローン候補を多数獲得した。これらそれぞれのクローンについて発現誘導の再現性を確認したのちにプラスミドを抽出し、トランスポゾンによりランダム断片化を行った後に次世代シーケンサーによる配列決定を実施した。解析に当たっては、80以上のプラスミドについてバーコード配列を用いた並列シーケンス解析を実施し、配列をdemultiplexしたのちに環状プラスミドとして再構成し、挿入配列に関するBLAST解析などを実施して既存のデータベースに対する探索を行ったが、その大半について、部分的なデータベースとのマッチしか認められず、また、用いた基質との関連を示す情報も見当たらないことから新規配列及び機能であることが推測された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に記載の内容について順調に実施しており、その進捗もほぼ想定内である。一方で、後に述べるように、想像を超える配列がデータベースと適合しない新規配列であることが明らかになり、当初想定していた、発現という現象から遺伝子機能を読み解くためには元のメタゲノム配列解析による周辺領域の配列解析も極めて重要な意味を持つことが明らかになった。
上記の状況から、遺伝子発現が起こったプラスミドの配列だけでなく、メタゲノムライブラリー自体の配列解析を行ったうえで基質誘導および誘導クローンの配列解析を実現するために極めて重要であることが明らかになった。このような中、長鎖の塩基配列を安価に配列決定できるシーケンサーが発売された。通常のメタゲノム解析では得られない情報とマッチさせるべき配列の情報を基に誘導クローンの配列解析を進め、広く一般に適用可能なゲノム機能解析手法としての確立へとつなげたい。
(理由)研究の結果、大半の誘導クローンでデータベースと照合ができない新規配列が多く含まれることが明らかになった。この状況から、遺伝子発現が起こったプラスミドの配列だけでなく、メタゲノムライブラリー自体の配列解析を行うことが基質誘導および誘導クローンの配列解析を実現するために極めて重要であることが明らかになった。このような中、長鎖の塩基配列を安価に配列決定できるシーケンサーが発売された。通常のメタゲノム解析では得られない情報とマッチさせるべき配列が効率的に決定できると、本研究の目的がより精緻に達成され、広く一般に適用可能なゲノム機能解析手法としての確立が実現できると考えた。その為、当初予定していた次世代シーケンサーによるプラスミド塩基配列解析の一部を上記新規塩基配列解析に置き換えることにし、次年度に試薬を購入して、メタゲノム配列解析と組み合わせて誘導クローンの解析を行うこととした。(使用計画)平成30年度には遺伝子配列解析を計画しており、そのために必要な試薬消耗品の購入などを予定している。
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Microbes and Environments
巻: In press ページ: In press
The FEBS Journal
巻: 284 ページ: 3470~3483
10.1111/febs.14204