研究課題
霊長類は、視覚や聴覚、嗅覚といった感覚を通じて外界の情報を認知している。中でも視覚に関する知見は多く、3色型色覚を持つ霊長類は、遠方の果実などの食べ物を見分ける際に有利であると考えられてきた。しかし、近年の研究から従来の視覚重視の考えに疑問が持たれるようになってきた。ただし、霊長類が食する果実の匂い成分が、成熟に応じてどのように変化しているのか、またこれらの匂いが霊長類の果実の選好性にどのように関与しているのかは、未知である。匂いの他にも、果実は、成熟に応じて色や大きさ、固さなどの様々な性質を変化させることが知られており、霊長類が、果実採食においてどのような特徴を重視し、選択するのかを解明することは、霊長類がどのような感覚を使って採食するのかを理解するうえで非常に重要である。本研究はコスタリカのグアナカステ保全区内サンタロサ地区において、色覚多様性が既知であるノドジロオマキザル(Cebus capucinus) が実際に食する果実の採集を行い、シリカ母材のカーボングラファイト含有である吸着剤とともに密閉したオーブンバッグに果実を入れ、匂いを捕集し、果実1種につき成熟段階ごとに3段階に分け、それぞれ5回ずつ匂い捕集を行い、昨年に引き続き、果実の成分分析、及び分析結果を基にした主成分分析を行っている。いくつかの果実において、成熟段階に応じて果実の揮発性有機物(VOC) の総量や組成が変化していることわかり、種によっては熟度による色の変化よりも匂いの変化の方が大きいという傾向が示された。
2: おおむね順調に進展している
成熟段階に応じて果実の揮発性有機物(VOC) の総量や組成が変化していることわかり、種によっては熟度による色の変化よりも匂いの変化の方が大きいという傾向は、今後の解析に検証項目として有効となる。
引き続き、得られた匂い成分データと果実種の違い、熟度の違い、サルの採食行動の違い、果実の他の物性(サイズ、硬度、反射分光特性など)とのより詳細な統計分析を行う。
理由:昨年に引き続き、試料の匂い測定法の検討により経費の節減ができたため。使用計画:当初の予定より果実の測定数を増やし、より多くの試料の分析を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件、 招待講演 5件) 備考 (2件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 114 ページ: 10402~10407
10.1073/pnas.1705957114
Evolution of the Human Genome I: The Genome and Genes (Saitou, N. ed.)
巻: 1 ページ: 181~216
10.1007/978-4-431-56603-8_10
http://www.jinrui.ib.k.u-tokyo.ac.jp/kawamura-home.html
http://www.jinrui.ib.k.u-tokyo.ac.jp/kawamura-home-E.html