研究課題/領域番号 |
16K14822
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岩永 光一 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (70160124)
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研究分担者 |
石橋 圭太 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40325569)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 時間知覚 / 右後頭頂葉 / 経頭蓋直流電気刺激 / 認知科学 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
「1.時間知覚評価指標の比較検討」では、時間知覚のパフォーマンスを評価する手法を選定した。「時間長再現課題」と「時間長弁別閾測定課題」を検討した結果、個人内での測定の再現性の観点では「時間長弁別閾測定課題」が優れていた。一方で、測定の簡便さでは「時間長再現課題」が優れていた。ここでの測定の簡便さは、試行回数の少なさという観点で評価した。測定方法による差異はあるものの、どちらの測定方法においても、測定の簡便さと測定の精度は互いに相反することがわかり、それらのバランスを考慮することが重要であることがわかった。また、測定による被験者の疲労を無視することができないと考えられるような測定データも得られた。その測定データでは、課題の終盤付近で時間長弁別閾が徐々に長くなる様子が示され、試行回数が多いと被験者の疲労が測定に影響してしまうことがわかった。 「2.右後頭頂葉への経頭蓋直流電気刺激による時間知覚パフォーマンス変化の測定」では、経頭蓋直流電気刺激の3条件(陽極刺激条件、陰極刺激条件、偽刺激条件)について、それぞれの刺激による時間知覚パフォーマンスの変化を測定した。各条件では、電気刺激の前に2回、刺激中に1回、刺激後に1回の計4回の測定を行なった。この4回の測定に際して、当初、測定に必要なパラメータを測定間で引き継いで使用した。これは、試行回数を少なくする目的であったが、一方で、直前の測定値が後続の測定値に影響を与えてしまう問題が起こった。このため、測定に必要なパラメータは測定ごとに初期化することとし、再度実験を実施した。再実験の結果、陰極刺激条件において時間知覚パフォーマンスが向上する傾向がみられた。この研究過程で得られた結果と知見の一部を「2016年度日本生理人類学会夏期セミナー・研究奨励発表会(関西地区)」において発表した。また、英語論文としてまとめ、学術雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画では、「1.時間知覚評価指標の比較検討」、「2.右後頭頂葉への経頭蓋直流電気刺激による時間知覚パフォーマンス変化の測定」、「3.時間知覚の変化が生理指標へ及ぼす影響の検討」を計画していた。現在までの進捗状況は、「1」と「2」をほぼ完了し、「3」についての準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
時間知覚パフォーマンスと相関のある生理指標を見出すという本研究の目的に向けて、「脳波を用いた時間知覚評価方法」を模索する。先行研究から、音刺激時間長の変化によって誘発される脳波成分が知られているため、本研究ではこの脳波成分を時間知覚パフォーマンスの推定に応用する方法を検討する。 現在までの研究から、時間知覚パフォーマンスは個人間の差異に加えて個人内での変動も大きいことがわかった。このため、当初の実験計画のように被験者内で条件を変えて実験を行う場合、被験者要因と条件の効果が交絡することが懸念される。よって、実験デザインを再検討し、交絡が起こりにくい実験計画を構築する必要がある。具体的には、被験者1人あたりの実験時間を極力短くする、実験日を1日に限定するなどの対策が考えられる。これらには、被験者の状態の変化が結果に影響しないようにする狙いがある。「脳波を用いた時間知覚評価方法」を模索する際、脳波成分の特徴と時間知覚パフォーマンスの関係を調査対象とするが、まずは被験者間での相関関係を明らかにすることに重点を置き、次いで、個人内での変動について検討する。
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