研究課題/領域番号 |
16K14823
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大橋 順 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80301141)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メラニン合成関連遺伝子 / 多型 / 皮膚色 |
研究実績の概要 |
ヒトの皮膚色は、環境に適応(紫外線からの防御とビタミンD合成を両立)すべく進化した最も多様な形質の一つである。メラニン色素の合成量は多数の遺伝子に支配されており、皮膚色は量的形質といえる。これまでに皮膚色との関連が確認されている多型では、皮膚色を明るくするのは全て派生アリルであり、メラニン合成関連遺伝子では常に機能低下型変異が起こっていると考えられる。したがって、明るい皮膚色と関連する機能低下型変異が固定しまうと、その集団は暗い皮膚色に戻ることはできなくなる。アジア人とメラネシア人とは遺伝的には近縁であるが、前者の皮膚色は明るく、後者はアフリカ人と同程度に暗い。両者の祖先は3~4万年前に分岐しており、わずか数万年間でこれほどの皮膚色の違いを生んだ進化機構についてはよくわかっていない。申請者は、これまで、アジア・オセアニア地域でのヒトの移住とその過程で作用した最近の正の自然選択について人類遺伝学的研究を行ってきた。これらの研究成果を踏まえ、「アジア・メラネシア集団でみられる多様な皮膚色の進化」を解明すべく、本研究を着想するに至った。 タイ人集団を対象に、これまでに報告のあった皮膚色関連多型について調べた。年齢と性別を調整した重回帰分析により、各非同義多型と3種類のskin reflectance値(上腕内側、額、額から上腕内側を引いたtanning ability)との関連を調べた。次に、派生アリル1コピー当りの独立な効果を推定すべく、独立な関連多型の全てを独立変数とし、性別と年齢で調整した重回帰分析を行い、各多型の偏回帰係数を求めた。メラネシア集団についても、それらの多型の解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイ人集団を対象にした関連解析、およびメラネシア集団の多型解析が完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
自然選択の検出 各メラニン合成関連遺伝子に作用する自然選択を検出すべく、集団毎にMcDonald-Kreitman検定(2x2の分割表を用いたFisherの正確確率検定)を行う。次に、アフリカ集団とメラネシア集団では、メラニン合成関連遺伝子に強い純化選択が働いていることを確かめる。派生アリルはほぼ全てが機能低下型変異と考えられるため、暗い皮膚色をもつこれらの集団は、他の集団よりも非同義多型の派生アリルの個数は少なく、その頻度は低いと予想される。これを適当な統計検定を用いて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
エクソーム解析を次年度に行うこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
エクソーム解析の消耗品費として使用する。
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