研究実績の概要 |
ヒトの皮膚色は、環境に適応すべく進化した最も多様な形質の一つである。出アフリカ以降、東アジア人の皮膚色は明るく変化したが、メラネシア人はアフリカ人と同程度の暗い皮膚色を保っている。両者の祖先は3~4万年前に分岐しており、わずか数万年間でこれほどの違いを生んだ進化過程についてはよくわかっていない。特に、(1)皮膚色は一度明るくなりメラネシアで再び暗くなったのか、(2)暗い皮膚色のまま東南アジアまで到達し、その後、アジアで明るくなったのかは謎である。本研究では、関連解析(皮膚色関連変異の網羅的同定)と集団遺伝学的解析(量的形質進化モデルの構築)を併用することで、アジア・オセアニア地域の皮膚色変化の歴史に迫ることを目的とした。 タイ国タック県在住タイ人213名を対象に、分光反射率測定器を用いた皮膚色測定(上腕内側および額のskin reflectance値測定)を行った。皮膚色関連候補多型として95個を調べ、年齢と性別を調整した重回帰分析により、各多型と3種類のskin reflectance値(上腕内側、額、額から上腕内側を引いたtanning ability)との関連を調べた。本研究では、派生アリルコピー数(0, 1, or 2)を各多型の値とした。次に、各種skin reflectance値を従属変数とし、調べた全多型の全てを独立変数とし、性別(女性は0 or 男性は1)と年齢で調整した重回帰分析を行い、各多型の偏回帰係数を求めた。 もっとも強い関連を示したのはDEF8遺伝子上にあるSNP(rs8049897)であった。また、ATRN遺伝子とMYO5A遺伝子上のSNPも関連していた。
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