米の持つ抗食物アレルギー能の品種間差異の遺伝様式を解明することを目的としている。そのために欠かせない、動物実験に代替できるin vitro評価系の開発とイネの実験系統群の作出に取り組んできた。
in vitro評価系におけるマーカー遺伝子の選定のための基礎を築く目的で、ラットの大腸における網羅的な遺伝子発現解析をRNA-seq解析により行った。「ゆきひかり」と親品種「キタヒカリ」と「空育99号」の米の給餌4日後の大腸から抽出したtotal RNAを用いた。給餌した米の品種間で発現量に差異のある遺伝子をF検定(p<0.05)により395遺伝子を見出した。供試した9匹のラットの各遺伝子の発現量に基づく階層的クラスター解析によって、給餌した米の品種ごとにクラスターを形成した。このことは、給餌した米の品種ごとに大腸における遺伝子発現に影響したことを示し、大腸まで到達する何らかの成分の違いを反映しているものと考察した。これら給餌した品種間で発現量の異なった遺伝子のうち、「ゆきひかり」群で発現の高い9遺伝子、逆に低い105遺伝子を見出した。本成果は、ヒト大腸培養細胞でのin vitro評価系の発現遺伝子マーカーの選定の基礎となった。
「ゆきひかり」を1回親とし、「きらら397」を反復親として用いた戻し交配の自殖後代について、イネゲノムを網羅的にカバーする99種のDNAマーカーの解析により、良食味品種「きらら397」を遺伝的背景とする26系統を作出した。「ゆきひかり」を1回親とし、「上育462号」を反復親として用いた戻し交配の自殖後代について、188種のDNAマーカーを解析することで、178系統から構成される染色体部分置換系統を作出した。
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