米の持つ抗食物アレルギー能の品種間差異の遺伝様式を解明することを目的としている。そのために欠かせない、①イネの実験系統群の作出と②動物実験に代替できるin vitro評価系の開発に取り組んできた。 ①抗食物アレルギー能を有する「ゆきひかり」の染色体部分を置換した2種類の染色体部分置換系統シリーズを作出した。一つ目は、良食味品種「きらら397」を遺伝的背景とする染色体部分置換系統26系統である。H30年度には、両親と染色体部分置換系統シリーズの栽培試験を実施し、農業形質の特性を評価した。染色体部分置換系統のうち1系統が極晩生で米の収穫に至らなかったが、残り25系統の米を準備することができた。 2つ目は、極良食味系統「上育462号」を遺伝的背景とする178系統から構成される染色体部分置換系統シリーズである。H30年度は、全系統の種子の増殖を終えた。以上により、「ゆきひかり」の染色体部分の効果を検出できる異なる遺伝背景の実験材料を準備できた。 ②in vitro評価系としてヒト大腸モデル細胞Caco-2に米粉を処理して、機能性を間接的に評価する手法の構築を目指した。発現マーカー遺伝子を選定するため、H30年度には、「ゆきひかり」と「きらら397」の炊飯米を人工消化液でin vitro消化した産物をCaco-2に添加して24時間培養し、RNAを抽出してDNAマイクロアレイを用いてトランスクリプトーム解析を行った。これまでに、マーカー候補遺伝子として、変動倍率とp値をもとに37遺伝子を選定した。これらの成果により、in vitro評価系の基盤が構築できた。
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