研究課題/領域番号 |
16K14829
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
辻 寛之 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 准教授 (40437512)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フロリゲン / アンチフロリゲン / イネ / 種子数 / メリステム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、花芽形成の決定因子・フロリゲンFTとその抑制因子・アンチフロリゲンTFL1の分子機能を解析し、さらに両者を人工的に改変してイネの種子数を増加させる技術を開発することである。アンチフロリゲンを恒常的に増強したイネは種子数が増加することが知られているが、同時に花成も著しく遅延するため実用的ではない。本研究では、「花成の前は発現がなく、花成直後から活性化するプロモーター」の制御下でアンチフロリゲンを発現させることによって、花成のタイミングに影響を与えることなく、種子数のみ増加させることを試みる。本年度は花成直後に活性化するプロモーターとしてPAP2遺伝子及びFTL1遺伝子のプロモーターを用いた形質転換イネを作成した。作成したイネを栽培してその到穂日数を測定した。本実験を二度反復し、穂の形質を詳細に解析している。また、PAP2プロモーターの活性化のタイミングを正確に把握するために、PAP2プロモーターで蛍光タンパク質のCloverもしくはmRuby2を発現する形質転換イネを作成した。これらの茎頂メリステムを観察し、PAP2プロモーターが花芽分化の開始後に活性化することを確認した。今後はPAP2プロモーターの制御下でアンチフロリゲン人工遺伝子を発現する形質転換イネを短日条件、長日条件、温室内の自然日長条件で栽培し、穂の形質と種子数を計測することによって、アンチフロリゲンによる収量増加が可能かどうかを検討する。 これまでに作成した形質転換イネを様々な条件で栽培し、穂の形質及び種子数を計測する。アンチフロリゲンRCNをPAP2プロモーターで発現するイネを作成し、これの穂の形質を調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、花芽形成の決定因子・フロリゲンFTとその抑制因子・アンチフロリゲンTFL1の分子機能を解析し、さらに両者を人工的に改変してイネの種子数を増加させる技術を開発することである。アンチフロリゲンを恒常的に増強したイネは種子数が増加することが知られているが、同時に花成も著しく遅延するため実用的ではない。本研究では、「花成の前は発現がなく、花成直後から活性化するプロモーター」の制御下でアンチフロリゲンを発現させることによって、花成のタイミングに影響を与えることなく、種子数のみ増加させることを試みる。 本年度は花成直後に活性化するプロモーターとしてPAP2遺伝子及びFTL1遺伝子のプロモーターを用いた形質転換イネを作成した。アンチフロリゲンとしては、イネのフロリゲンHd3aのアニオン結合ポケットに面するヒスチジンをチロシンに置換したもの、及びこれらにさらに転写抑制機能を与えるSRDX配列を付加した人工遺伝子を用いた。作成したイネを栽培してその到穂日数を測定した。本実験を二度反復し、穂の形質を詳細に解析している。計測する穂の形質は、一次枝こう数、一次枝こうに着生した側生器官数、二次枝こう数、二次枝こうへの着生えい花数及び種子数である。 また、PAP2プロモーターの活性化のタイミングを正確に把握するために、PAP2プロモーターで蛍光タンパク質のCloverもしくはmRuby2を発現する形質転換イネを作成した。これらの茎頂メリステムを観察し、PAP2プロモーターが花芽分化の開始後に活性化することを確認した。 今後はPAP2プロモーターの制御下でアンチフロリゲン人工遺伝子を発現する形質転換イネを短日条件、長日条件、温室内の自然日長条件で栽培し、穂の形質と種子数を計測することによって、アンチフロリゲンによる収量増加が可能かどうかを検討する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作成した形質転換イネを様々な条件で栽培し、穂の形質及び種子数を計測する。アンチフロリゲンRCNをPAP2プロモーターで発現するイネを作成し、これの穂の形質を調査する。また、PAP2プロモーターの活性化のタイミングを詳細に明らかにするため、PAP2プロモーターの制御下で蛍光タンパク質を発現するイネの茎頂メリステムを栄養成長期から生殖成長期への移行期や穂の分枝が増加する時期に着目して観察する。 これらの観察を通して、アンチフロリゲンによる収量増加の可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度形質転換イネの開発を計画していたが、アンチフロリゲンの配列の複雑さから想定外に時間がかかり、これの形質転換と表現型計測に当初想定以上に時間がかかっている。本実験を翌年度にも実施することにしたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の使用計画では、アンチフロリゲン遺伝子をPAP2プロモーターで発現するイネを様々な条件で栽培し、出穂の早晩性や穂の形質を調査する。並行して、これまでに作成した形質転換イネ、すなわちPAP2プロモーターの制御下で人工アンチフロリゲン遺伝子を発現するイネの穂形質調査、及びPAP2プロモーター自体の活性化の様子を明らかにするためのイメージング実験を実施する。
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