本研究の目的は、花芽形成の決定因子・フロリゲンFTとその抑制因子・アンチフロリゲンTFL1の分子機能を解析し、さらに両者を人工的に改変してイネの種子数を増加させる技術を開発することである。アンチフロリゲンを恒常的に増強したイネは種子数が増加することが知られているが、同時に花成も著しく遅延するため実用的ではない。本研究では、「花成の前は発現がなく、花成直後から活性化するプロモーター」の制御下でアンチフロリゲンを発現させることによって、花成のタイミングに影響を与えることなく、種子数のみ増加させることを試みる。 花成抑制機能を与えるとされる点変異を導入した改変型イネFT遺伝子にキメラリプレッサーを融合する「人工アンチフロリゲン遺伝子」を作成し、茎頂メリステムにおいて花成直後から穂の形成を通して発現するプロモーターと融合した発現コンストラクトをイネに導入した。人工アンチフロリゲン遺伝子としては点変異を導入したものと導入しないもの、さらにキメラリプレッサーとの間にリンカーを導入したものと導入しないものの4種類を作成した。得られた形質転換イネはアンチフロリゲン遺伝子を期待通り花成直後に茎頂メリステムで発現開始していることが確認できた。形質転換イネの表現型を短日条件及び長日条件で解析したところ、粒数が顕著に増加した系統を得ることはできなかったが、形質転換イネの中から花成が遅れずに一次枝こうが増加した系統を得ることができた。
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