研究課題/領域番号 |
16K14838
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
足立 文彦 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (10335549)
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研究分担者 |
大道 雅之 拓殖大学北海道短期大学, その他部局等, 教授 (20461692)
城 惣吉 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (20721898)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 根粒菌 / 共生 / アレロパシー / 根粒着生数 / ダイズ / 植物ホルモン / ジャスモン酸 / 他感作用 |
研究実績の概要 |
根粒着生を評価するための給水マット水耕栽培方法を確立後、根粒着生促進効果の種間差を調査した.メヒシバ,オオバコ,オナモミ,ホソアオゲイトウを育苗箱内に播種し、地上部を切除後に育苗箱を水に浸漬し雑草土壌浸透水を回収した。根粒菌(USDA 110)を10^7cell /Lの菌密度となるよう各雑草土壌浸透水に添加混合した水耕液を供試し、ダイズを水耕栽培した.その結果、無雑草土壌水と比較してメヒシバで根粒着生数と根粒重が有意に増加した.そこで、メヒシバとオナモミの土壌浸透水とオナモミ茎葉浸漬水を用いて同様の比較実験を行うと、メヒシバとオナモミ茎葉浸漬水では有意な根粒着生の促進効果が認められるのに対し、オナモミ土壌浸透水では効果が見られなかった。すなわち、メヒシバでは根から、オナモミでは茎葉からの産生物質が根粒着生を促進していることが考えられた。これは、同種の他感作用物質の産生部位と一致するため、雑草のアレロパシーによりダイズがフラボノイド産生を高進させ、その結果、根粒形成が促進されていることが考えられた。 雑草根圏ガスの根粒着生促進効果の有無を調査するため,8月初旬にヒエとメヒシバを育苗箱に播種し栽培し,ダイズを水耕栽培したコンテナを雑草の育苗箱で覆うことで雑草根圏ガスが水耕液に溶け込むようにし栽培した.また,雑草地上部を地際約3cmで切除する処理の有無を併せて比較し,傷害により発生する物質の効果をみた.雑草根圏ガスを水耕液に曝露させた場合,地上部切除により5%水準で有意に根粒着生数が増加し,雑草根から放出される気化物質が根粒着生に影響する可能性が示唆された。 一方、寒地の北海道において、雑草管理方法を変えてダイズを栽培した場合の根粒着生数を比較すると、7月下旬では除草剤や手取除草に比較して、地上部刈取り、放置した場合に着生数が増加することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土耕栽培ではさまざまな要因により栽培条件を一定にできず、雑草の産生物質の効果を評価することが難しい問題があったため、2年間をかけて、給水マットを用いた水耕栽培法を確立した。この実験方法の改良により、効果の比較が非常に容易になり、根粒着生促進効果の種間差を詳細に比較が可能となった。その結果、物理的傷害を与えない場合でも根粒着生促進には雑草種間差があること、この原因は、雑草のアレロパシーによりダイズがフラボノイド産生を高進させることで根粒着生数が増加していることが原因と考えられた。ただし、雑草に傷害を与えた場合にも有意に根粒着生が増加することから、雑草根から放出される気化物質が根粒着生に影響している可能性が考えられた。この物質は、傷害植物ホルモンであるジャスモン酸メチルだけでなく、揮発性のアレロパシー物質の両者が関与する可能性があり、さらに明らかにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
数種雑草を用いた根粒着生数の促進効果の比較により、従来、アレロパシーが報告されている草種でダイズ根粒着生数の増加が認められることから、雑草のアレロパシーによりダイズがフラボノイド産生を高進させ、根粒形成が促進されているプロセスを、着生数増加の主な原因であるとみなし、今後は、これまでに確認されている雑草の傷害によるダイズ根粒数の増加が、雑草からの揮発性の植物ホルモンと他感作用物質のどちらか、あるいは両者が関与するのかを、ダイズのフラボノイド測定とNod遺伝子発現解析を同時に行うことで明らかにする必要がある。 一方、従来アレロパシーを持つことが報告され、その作用物質と産生部位が明らかとなっている牧草を用いて、圃場栽培したダイズと牧草の栽植密度を変えて間作することによりその影響を暖地と寒地で実証的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数残額が生じた。次年度予算額と合算して有効に適切に使用する。
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