研究実績の概要 |
米ぬか(組織は主として果皮および糊粉層)農法は、有機肥料としての効用だけでなく、経験的に雑草防除効果が知られている。その作用は、遮光および嫌気効果と理解されてきたが、米ぬかによる雑草種子発芽抑制メカニズムには未だ不明な点が数多く残されている。本課題では、特に雑草抑制効果が高い黒米の米ぬか成分中に含まれるアントシアニンの機能として、抗酸化能力に着目した。 平成28年度は黒米が特に有意に発芽・伸長を抑制することを確認し、またイネ科植物の発芽研究でモデル植物としてよく用いられているムギ類を材料に生化学解析を行った。 最終年度である平成29年度では、ひきつづき代表的な水田雑草のヒメタイヌビエを用い、米ぬかによる雑草種子の活性酸素(ROS)とROS分解酵素として、SOD, CAT, APX, GPX等の含量を調べた。まず、米ぬかは水稲の成長を抑制しないことを確認した。米ぬかの抗酸化能力が高いほど、ヒメタイヌビエの発芽および伸長を抑制することを明らかにした。米ぬかの抗酸化能力は無色米より有色米で高く、有色米(黒米)品種は、ヒメタイヌビエの発芽および伸長を著しく抑制した。米ぬか中の抗酸化物質がヒメタイヌビエのROSを直接分解したことが示唆された。オオムギ種子では、ROSの一種であるH2O2含量は、吸水処理後に胚で有意に増大し発芽を促進し、発芽抑制には、抗酸化物質による活性酸素消去系が機能していた。これらのことから、黒米の米ぬか中に含まれるアントシアニンはROSの生成を抑え、水田雑草の発芽抑制に有効に機能することが示された。
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