本研究では、インドール酢酸(IAA)-グルコース加水分解酵素をコードするTGW6の機能喪失型変異をもつ準同質遺伝子系統(NIL)を用いて、葉へのデンプン蓄積機構を明らかにし、さらに蓄積したデンプンが、葉鞘や稈を経由して穂へ蓄積される過程を追跡することによりデンプン代謝制御による高温登熟障害軽減を目指すものである。 本年度は、昨年度に開発したオーキシン阻害剤処理系を用いて、阻害剤処理によりデンプン代謝に関与する遺伝子などの発現レベル変化を調べ、阻害剤処理によってもデンプン代謝関連遺伝子の発現が変化することを確認した。このことは、オーキシンがイネの下部葉鞘におけるデンプン蓄積に関与していることを示すものであった。 また、コシヒカリおよびNILの圃場試験を行い、収量調査および栄養成長期・出穂期・登熟期それぞれの生育ステージにおける葉身・葉鞘・稈など部位別のサンプリングを行ない、それらのデンプン含量から、登熟過程におけるデンプンの転流速度を見積もった。その結果、NILにおいて幼穂形成期~出穂期区間に葉鞘から稈へのデンプン転流が増加しており、出穂期~収穫期区間でも稈から穂へのデンプン転流増加が見られた。以上のことから、NILにおいて出穂期までに蓄積したデンプンは、収穫期までに稈を経て穂まで転流されることが明らかとなった。
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