これまでダイズの多収化の実現に向けては地上部の生育のみに着目した多収理論や地下部の根粒による窒素固定能力に着目した研究がほとんどで、ダイズ-根粒菌の共生関係を統一的にとらえ、共生関係を最大限活用して多収を実現する考え方は未だ立証されていない。本研究では、様々な大気-土壌栄養環境下(温度、二酸化炭素濃度、窒素条件)の実験系において、ダイズ-根粒菌の共生関係を維持するために重要な炭素(=根粒を賄うためのダイズが生産する光合成産物)と窒素(=ダイズが光合成するために根粒が供給する栄養分)の需給関係を解析し、炭素・窒素需給バランスからみたダイズの乾物生産、収量が最大となる最適ノジュレイションレベル(=最適根粒着生レベル)を明らかにすることを目指す。 温度勾配型チャンバーを用いて異なる温度(外気、外気+5℃)と二酸化炭素濃度(外気、外気+200ppm)の条件下においてダイズを生育させることで炭素・窒素需給バランスを変化させ、ダイズの乾物生産、収量と根粒菌の炭素要求と窒素供給の関係についてノジュレイションレベル(根粒重/根重)に着目して調査した。 高温条件下で根粒数は増加する一方で根粒は小型化するが、二酸化炭素濃度を増加させることで根粒サイズは維持または大型化し、ノジュレイションレベルは高まった。そして、ノジュレイションレベルの向上に伴いダイズ子実が大粒化し、収量が増加する傾向がみられ、ノジュレイションレベルと百粒重の間に密接な関係が認められた。これに対して、ノジュレイションレベルと乾物生産、収量の間には直接的な相関関係は認められなかった。 以上より、根粒の大型化に伴いノジュレイションレベルが高まることで、子実の肥大が促進されて百粒重が増大し、収量が向上するメカニズムが示唆された。今後は、ダイズ体内の成分分析を行い、ノジュレイションレベルや子実の肥大、収量の関係について解析する。
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