研究課題/領域番号 |
16K14846
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
池田 和生 山形大学, 農学部, 准教授 (80555269)
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研究分担者 |
村山 秀樹 山形大学, 農学部, 教授 (40230015)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 組織培養 / 果皮色 / キメラ |
研究実績の概要 |
本年度は赤着色系セイヨウナシの果皮組織からの再分化系を確立するために,培養条件として,培地成分並びに外植片等の影響についての検討を行った.実験の供試品種として,セイヨウナシ‘リーガル・レッド・コミス’および‘ロージー・レッド・バートレット’の2品種を用いた.幼果および果実の果皮を外植片として,NN培地および改変NN培地の2種類の培地,ゲランガムおよび寒天の22種類の固化剤,NAA濃度 0.1および0.2 mg/Lの条件下で,25℃暗黒下にて1ヶ月間,その後16時間日長にて培養を行い,毎月カルス形成率を調査した.培養開始約30日後の暗黒条件下においてカルス発生が確認でき,それらのカルスは赤色,緑色,白色のものが観察され,中でも緑色カルスの形成数が最も多かった.また,赤色カルスが形成されたことから,果皮培養によって赤着色形質を示すL1層由来のカルス形成が確認できた.幼果の果皮を外植片に用い基本培地を改変NN培地とした場合にカルス形成は良好であり,カルス形成に及ぼす固化剤の影響についての検討を行ったところ,ゲランガムを添加した場合で高いカルス形成率が得られた.また,カルス形成に及ぼすオーキシンの影響についての検討を行ったところ,NAA濃度の間ではカルスの形成に顕著な差はみられなかった.そのため,オーキシンとしてNAAを添加する場合には0.1 mg/Lで十分であると考えられる.以上のように本研究では全面赤着色系セイヨウナシの果皮からのカルス形成における培養条件の一部が明らかとなったが,シュート形成は認められなかったためさらなる培養条件の検討が必要であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度では,セイヨウナシ果皮からのシュート再生または脱分化によるカルス形成を経たシュートの再分化を目的として果皮培養条件の検討を行った.セイヨウナシにおける組織培養ではこれまで葉片を外植片としてシュート再生もしくはカルスを経由した再分化には成功しているが果皮からのシュート再生の報告はない.今年度の結果から,果皮からのカルス形成は成功しており,赤色カルスの形成も認められたことから,L1層由来の脱分化カルス形成までは到達したと考えられる.しかしながら,シュートの再分化までには至っておらず,この点については当初の予定よりも遅れている.カルスからのシュート再分化についてその条件をさらに検討する必要があり,使用する植物ホルモンの種類および濃度について検討を進める.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,前年度に明らかとなった培養条件,すなわち基本培地を改変NN,固化剤をゲランガム0.4%として,植物ホルモンであるサイトカイニンの種類と濃度の条件を検討する.サイトカイニンの種類については前年度使用したチヂアズロンに加え同じバラ科に属するリンゴにおいてシュート再生の報告があるベンジルアデニンを検討条件に追加し、4種類の濃度条件を組み合わせ,新たに果皮からのカルス形成およびシュート再生を試みる.それに加え,前年度脱分化に成功したカルスを外植片として同様の条件でシュート再生を検討する予定である.
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