研究課題/領域番号 |
16K14850
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
白武 勝裕 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (90303586)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トマト / ゲノム編集 / MYB3R転写因子 / 果実大型化 / 細胞分裂 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,「1,MYB3Rをゲノム編集で機能破壊するためのCRISPR/Cas 9ベクターの構築」,「2,MYB3Rゲノム編集ベクターのトマトへの形質転換」,「3,MYB3Rがゲノム編集されたトマト系統の選抜」,「4,MYB3R両アリゲノム編集かつ形質転換ベクターフリー(ヌルセグリガント系統)系統の獲得」の4項目を目標とした.「1,MYB3Rをゲノム編集で機能破壊するためのCRISPR/Cas 9ベクターの構築」については,共同研究先の神戸大学が開発した,新しいゲノム編集技術であるCRISPR/dCasおよびCRISPR/nCasのベクターの構築を追加したことにより,ベクターの構築に当初計画で想定した以上に多くの時間を要したが,これを完了した.「2,MYB3Rゲノム編集ベクターのトマトへの形質転換」については,CRISPR/Cas 9ベクターとCRISPR/nCasベクターを用い,モデル品種のマイクロトムに形質転換を行った.当研究室では,マイクロトムの形質転換系がルーチンで動いているが,本実験では何故か形質転換効率が著しく悪く,獲得形質転換個体が少なかった.そこで,形質転換の条件やスクリーニングの条件(アグロバクテリウム菌株,培地組成,抗生物質濃度,植え継ぎ条件)を検討し,特に培地へのIBA(indole-3-butyric acid)の添加と黒く壊死した組織の除去により状況が改善し,多数のカルス(30~40個)との形質転換シュート(20~30個)が得られるようになった.上記の2つの要因により,全体的に研究が遅れ,「3,MYB3Rがゲノム編集されたトマトへ系統の選抜」の途中までしか研究が進展しておらず,また,「4,MYB3R両アリゲノム編集かつ形質転換ベクターフリー(ヌルセグリガント系統)系統の獲得」の実験には進めなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度は,「1,MYB3Rをゲノム編集で機能破壊するためのCRISPR/Cas 9ベクターの構築」,「2,MYB3Rゲノム編集ベクターのトマトへの形質転換」,「3,MYB3Rがゲノム編集されたトマト系統の選抜」,「4,MYB3R両アリゲノム編集かつ形質転換ベクターフリー(ヌルセグリガント系統)系統の獲得」の4項目を目標としたが,前述のように「1,MYB3Rをゲノム編集で機能破壊するためのCRISPR/Cas 9ベクターの構築」において,新しいゲノム編集技術であるCRISPR/dCas,CRISPR/nCasのベクターの構築を追加したこと,また,「2,MYB3Rゲノム編集ベクターのトマトへの形質転換」における形質転換効率が著しく悪く,獲得形質転換個体が少なかったため,「3,MYB3Rがゲノム編集されたトマトへ系統の選抜」の途中までしか研究が進展しておらず,「4,MYB3R両アリゲノム編集かつ形質転換ベクターフリー(ヌルセグリガント系統)系統の獲得」の実験には進めなかった.しかしながら,形質転換法を改良することにより,現在は多数の形質転換シュートが得られるようになったため,実験の遅れを挽回しつつある.従来型のCRISPR/Cas 9に対して,CRISPR/dCas,CRISPR/nCasは日本発(共同研究先の神戸大学が開発)のゲノム編集技術であるため,ゲノム編集作物の品種化の際に有利な技術であり,ゲノム編集ベクターの変更は,将来を見越した,効果的な変更だと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
前述のように,「1,MYB3Rをゲノム編集で機能破壊するためのCRISPR/Cas 9ベクターの構築」において,新しいゲノム編集技術であるCRISPR/dCas,CRISPR/nCasのベクターの構築を追加したこと,また,「2,MYB3Rゲノム編集ベクターのトマトへの形質転換」における形質転換効率が著しく悪く,獲得形質転換個体が少なかったため,「3,MYB3Rがゲノム編集されたトマトへ系統の選抜」の途中までしか研究が進展しておらず,全体的に研究に遅れが生じている.しかしながら,形質転換法を改良することにより,現在は多数の形質転換シュートが得られるようになったため,実験の遅れを挽回しつつある.当研究室における,別のトマト遺伝子のゲノム編集実験において,形質転換当代(T0世代)でターゲット遺伝子の両アレルが編集された系統が比較的高頻度で得られた.このため,本研究においては,当初は次世代(T1世代)で解析予定であった,MYB3R両アレルゲノム編集個体の果実形質の解析を,形質転換当代(T0世代)で得られるMYB3R両アレルゲノム編集個体を用いて実施する(一世代早く解析を前倒しする)ことにより研究の遅れを挽回し,当初計画通り,平成29年度中に計画した実験を完了できるよう研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」に記載したように,「1,MYB3Rをゲノム編集で機能破壊するためのCRISPR/Cas 9ベクターの構築」において,新しいゲノム編集技術であるCRISPR/dCas,CRISPR/nCasのベクターの構築を追加したこと,また,「2,MYB3Rゲノム編集ベクターのトマトへの形質転換」における形質転換効率が著しく悪く,獲得形質転換個体が少なかったため,「3,MYB3Rがゲノム編集されたトマトへ系統の選抜」の途中までしか研究が進展しておらず,「4,MYB3R両アリゲノム編集かつ形質転換ベクターフリー(ヌルセグリガント系統)系統の獲得」の実験には進めなかった.このため,「3,MYB3Rがゲノム編集されたトマトへ系統の選抜」および「4,MYB3R両アリゲノム編集かつ形質転換ベクターフリー(ヌルセグリガント系統)系統の獲得」の実施のために計上した予算が執行できず繰越し(未使用)となった.
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次年度使用額の使用計画 |
「今後の研究の推進方策」に記載したように,形質転換法を改良することにより,現在は多数の形質転換シュートが得られるようになったため,実験の遅れを挽回しつつある.また,当初は次世代(T1世代)で解析予定であった,MYB3R両アレルゲノム編集個体の果実形質の解析を,形質転換当代(T0世代)で得られるMYB3R両アレルゲノム編集個体を用いて実施する(一世代早く解析を前倒しする)ことにより研究の遅れを挽回し,当初計画通り,平成29年度中に計画した実験を完了できるよう研究を推進する.このため,平成28年度に計画したが実施できなかった実験と当初平成29年度に実施予定であった実験の両方を,平成29年度に実施することになるため,予算も平成28年度の未使用分と当初平成29年度に計上した予算の両方が必要である.平成28年度の持ち越し実験と未使用予算の執行は,平成29年度の前半に行う予定である.
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