平成29年度は,「1,トマトのMYB3Rの遺伝子ファミリーの機能解析」および「2,MYB3R機能破壊ゲノム編集トマトの作出」を進めた.「1,トマトのMYB3Rの遺伝子ファミリーの機能解析」として,トマトのゲノムワイド解析により4個のMYB3R遺伝子を見出し,それらとシロイヌナズナのオルソログとの比較から,転写促進型が2個(SlMYB3R1,SlMYB3R4),転写抑制型が1個(SlMYB3R3),機能不明型が1個(SlMYB3R2)であることが分かった.また,STRINGを用いた共発現解析の結果から,トマトの4個のMYB3Rはいずれも細胞周期関連遺伝子との発現相関が高く,細胞分裂の制御に関わることが示唆された.そして,それらの果実の成長ステージ別の発現解析(RT-PCR)の結果から,転写促進型のSlMYB3R1とSlMYB3R2が未熟果(細胞分裂期の果実)における細胞分裂の促進に,その後の果実の細胞分裂の停止に転写抑制型SlMYB3R3が働き,そしてSlMYB3R4が成長後期の果実における核内倍加に関わることが示唆された.「2,MYB3R機能破壊ゲノム編集トマトの作出」については,前述の果実の細胞分裂の停止に働くことが予想されるSlMYB3R3の機能破壊を行うため,共同研究先の神戸大学が開発した新規ゲノム編集技術CRISPR/nCasを活用し,前年度より引き続いてゲノム編集トマトの作出を進めた.前年度の研究の遅れから,形質転換当代(T0)でSlMYB3R3両アレルが編集された系統の獲得に努めたが,片アレル編集系統しか得られず,形質解析に至らなかった.現在,片アレル編集系統の後代の獲得を進めており,これらの中からSlMYB3R3両アレルが編集された系統を獲得し,形質解析を行う予定である.
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