研究課題
プラズマは一般に気体が電離した状態のものを指し、工学、医学、農学など幅広い分野に応用可能な新技術として注目されている。プラズマ照射に種子伝搬性イネ苗病害の抑制効果を検討した。イネもみ枯細菌病菌(Burkhorderia glumae)またはイネ苗立枯病細菌を減圧接種(5分)することにより、罹病種子を準備した。同種子を、28℃で1日吸水させ、はとむね期に達した種子にプラズマを10分間(2分,5回)照射した。その後、照射種子を育苗土に播種し,9日間培養し(30℃,16時間明/8時間暗)、発病度を調査した。その結果、プラズマ非照射区では発病度97.6だったのに対し、プラズマ照射区では、イネもみ枯細菌病・イネ苗立枯病とも、有意に低い発病度を示し、両病害の発病が抑制されていることが明らかとなった。また、イネの発芽率や生育には、プラズマ照射が影響しないことも確認した。以上の結果から、プラズマ照射により、イネもみ枯細菌病菌やがイネ苗立枯病細菌が死滅したものと推測された。また、種子を切断し、DAB染色により過酸化水素の生成を解析したところ、プラズマ非照射に比べ、プラズマ照射で、種子の胚組織に過酸化水素の蓄積が認められたが、プラズマ照射前に種子を吸水させたかった場合は、病害抑制も認められず、過酸化水素の生成も求められなかった。したがって、プラズマ照射により、水から生成された活性酸素種が、イネもみ枯細菌病菌の殺菌効果に寄与している可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
プラズマ照射により植物組織に活性酸素種のひとつである過酸化水素が直積することが確認できた。
本年度は、過酸化水素が直接、病原菌に殺菌作用をもつ可能性を示すデータが得られたが、今後は、プラズマ照射した植物組織における他の活性酸素種の生成と防御関連遺伝子の発現を解析し、プラズマによる植物の免疫システムの活性化について検討を進める。
プラズマ照射植物における免疫システムの活性化について、マーカー遺伝子の発現解析まで至らなかったため。
プラズマ照射植物における免疫システムの活性化に関わる防御関連遺伝子をqPCRにより解析するための分子生物学関連試薬に使用する。合わせて、免疫システムの活性化シグナルである過酸化水素の生成解析も行うための試薬に使用する。
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Plant Pathology
巻: 65 ページ: 67-76
10.1111/ppa.12555