研究課題
本研究ではPseudomonas syringae pv. tabaci (Pta) 6605をモデル細菌として、2つの主要な多剤排出ポンプMexAB-OprM, MexEF-OprNの病原力における役割を解析するため、mexB変異株とmexF欠損変異株を作出し、それらの病原力を精査した。これまでmexF欠損変異株は、swarming運動能が低下し、野生株に比べ宿主タバコへの病原力は低下するとのデータが得られていたが、様々な接種法で検証した結果、野生株においてMexEF-OprNの病原力における必要性は低いと判断した。MexAB-OprMについては現在解析中である。広宿主範囲プラスミドベクターであるpDSK519にmexTを組込み、Pta6605に導入して、構成的にmexT, mexEF-oprNの発現を増高させた菌株では、AHLの生産がキャンセルされたことを前年度に明らかにしていたが、今年度はAHL合成酵素遺伝子であるpsyIの発現を解析した。mexT高発現株でのpsyIの発現は低いと考えていたが、予想に反して野生株やpDSK519だけを導入した菌株と同様レベルで発現していた。このことからmexT高発現株でAHLが検出されないのは、AHLが合成されていなかったのではなく、合成されてもすぐに排出されたため蓄積しないためだと推察された。また、mexEプロモーターならびにmexAプロモーターのそれぞれにlacZYA を連結させたキメラ遺伝子を導入し、接種時にそれぞれのプロモーター活性をモニターしたところ、mexA::lacZYAを導入した場合、接種4日後にわずかなβガラクトシダーゼの活性があったが、mexE::lacZYAを導入した場合、βガラクトシダーゼの活性は見られなかった。感染時におけるmexAB-oprM, mexEF-oprNの発現についてはさらなる解析が必要である。
2: おおむね順調に進展している
fliC欠損変異株ばかりでなく、motABCD欠損変異株、aefR欠損変異株、gacA欠損変異株でAHLが蓄積されない原因がmexEF-oprNの高発現にあることを、数々のダブルミュータントを作出することにより明らかにした。さらにmexT高発現系の構築に成功し、mexTそしてmexEF-oprNを高発現させるとAHLが蓄積しなくなることを実証した。mexEF-oprNの発現、mexAB-oprMの発現をモニターできるレポーターキメラ遺伝子の作出は終えており、それらを導入した菌も作出済みである。以上のことより、研究課題はおおむけ順調に進展していると判断した。
mexB欠損変異株を用いて、MexABoprMの病原力における役割の解析を終了し、結論を得ることを目標とする。
薬剤感受性を調べるフランスBioMerieux 社製のEtestなどの輸入に時間がかかったため。
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Molecular Genetics and Genomics
巻: 未定 ページ: 未定
doi.org/10.1007/s00438-018-1430-9