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2017 年度 実施状況報告書

アリを農家の味方につけるための栄養共生の研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K14865
研究機関琉球大学

研究代表者

辻 瑞樹  琉球大学, 農学部, 教授 (20222135)

研究分担者 中牟田 潔  千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (70343788)
北條 賢  関西学院大学, 理工学部, 准教授 (70722122)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード昆虫 / 生態学 / 動物行動学 / 総合的害虫管理 / 化学生態学
研究実績の概要

本課題の目的はアリを農業害虫の生物的防除資材として積極利用する新方法の開拓である。アリは多くの節足動物に対する強力なジェネラリスト捕食者であるが、害虫である甘露排出性昆虫を保護してしまうという防除資材としての欠点を持つ。近年、進化生態学はアリと共生者の間にある潜在的緊張関係を明らかにしてきた。例えば、アリは好む甘露を提供する共生者を保護し、好まない甘露しか提供しない共生者への随伴をやめたり捕食したりする。逆にアリの行動を利己的に操作する分泌物もシジミチョウで見つかった。これらの裏にある仕組みを賢く利用し、アリが好む人工甘露を開発し圃場に設置するなどで、甘露排出性昆虫とアリの共生関係にくさびを打ち、害虫捕食者としての機能だけを残しアリを「農家の味方につける」方法を探究する。以上が全体展望であるが、29年度は、前年度に続きアリ随伴性と非随伴性半翅目の間にある体表炭化水素成分の違いを多数種で比較した。後者には飽和炭化水素が、前者に種によって様々な非飽和炭化水素が多く見られることが示唆されたが、系統群特異性や種特異性も高く好蟻性に共通する成分は発見されなかった。分岐アルカンの合成品をアリはよく連合学習し、随伴にはアリ側の学習が必要であるとする我々の先行研究の知見を支持した。また社会学習特異的な炭化水素成分の可能性も示唆された。甘露の成分分析ではアリが好む甘露には新成分を含む各種三糖類が多く含まれるとする過去の知見を支持する結果が得られた。アリの随伴行動やガード効率に与える影響をみるため、人工甘露を使う実験をミカンコナカイガラ、パイナップルコナカイガラ、ツヤオオズアリ、寄生蜂系を用い本実験を行った。アリの随伴行動はやや変化したがカイガラムシの寄生率は変化しなかった。今後はアリが好む甘露を分泌する半翅目を植物ごとバンカープラント的に圃場に導入する実験を行いたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アリの随伴と学習に関する新しい知見が続々と発見され国際誌にも掲載されたが、人工甘露の実験では防除効率改善は実現できないままで、アリの栄養学に関する基礎的研究のさらなる掘り下げが必要となった。

今後の研究の推進方策

当初の計画通り、人工甘露の使用だけでなくアリが好む甘露を植物ごとバンカープラントとして圃場に導入する実験も行いたい。

次年度使用額が生じた理由

2年度目は全体会議を開催しなかったが、かわりに最終年度に中間報告会(30年度始めに既に開催した)と最終報告会(年度末)を開催する予定であり、相応分の旅費の使用が予定される。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] The presence of an alternative food source changes the tending behavior of the big-headed ant, Pheidole megacephala (Hymenoptera: Formicidae) on Dysmicoccus brevipes (Homoptera: Pseudococcidae)2018

    • 著者名/発表者名
      Win, A. T., Kinoshita, T., Tsuji, K.
    • 雑誌名

      Applied Entomology and Zoology

      巻: 53 ページ: 253-258

    • DOI

      10.1007/s13355-018-0553-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Social transmission of information about a mutualist via trophallaxis in ant colonies2017

    • 著者名/発表者名
      Hayashi, M., Hojo, M.K., Nomura, M., Tsuji, K.
    • 雑誌名

      Proceedings of the Royal Society of London, Series B

      巻: 284 ページ: 20171367

    • DOI

      10.1098/rspb.2017.1367

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Tetramorium tsushimae Ants Use Methyl Branched Hydrocarbons of Aphids for Partner Recognition2017

    • 著者名/発表者名
      Sakata, I., Hayashi, M., Nakamuta, K.
    • 雑誌名

      Journal of Chemical Ecology

      巻: 43 ページ: 966-970

    • DOI

      10.1007/s10886-017-0891-3

    • 査読あり
  • [学会発表] 沖縄島のアリ類における多種共存メカニズム仮説の検証2018

    • 著者名/発表者名
      野中 春日, 下地 博之, 木下 哲, 辻 和希
    • 学会等名
      第65回日本生態学会大会
  • [学会発表] アリには多巣性と単巣性がなぜあるのか2018

    • 著者名/発表者名
      辻 和希・Win Aye Thanda
    • 学会等名
      第62回日本応用動物昆虫大会
  • [学会発表] Ecology and evolution of chemical communication in an ant-butterfly mutualism2017

    • 著者名/発表者名
      Masaru K. Hojo
    • 学会等名
      日本味と匂学会第51回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] シジミチョウとアリの共生におけるケミカルコミュニケーション2017

    • 著者名/発表者名
      北條 賢
    • 学会等名
      日本動物学会 中部支部大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Mating disruption of a Japanese gypsy moth, Lymantria dispar japonica2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Minegishi and Kiyoshi Nakamuta
    • 学会等名
      33rd Annual Meeting of the International Society of Chemical Ecology
    • 国際学会
  • [学会発表] Foraging Strategies of a Queenless Ant, Diacamma sp. in Subtropical Okinawa Island, Japan2017

    • 著者名/発表者名
      Aye Thanda Win, Yuto Machida, Yoshihiro Miyamoto, Shigeto Dobata and Kazuki Tsuji
    • 学会等名
      SWARM2017: THE SECOND INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON SWARM BEHAVIOR AND BIO-INSPIRED ROBOTICS
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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