研究課題
アリは多くの節足動物に対する強力なジェネラリスト捕食者であるが、害虫である甘露排出性昆虫を保護してしまうという防除資材としての欠点を持つ。本研究では、アリが好む人工甘露を開発し圃場に設置するなどで、甘露排出性昆虫とアリの共生関係にくさびを打ち、害虫捕食者としての機能だけを残しアリを「農家の味方につける」方法を探究する。30年度は、前年度に続きアリ随伴性と非随伴性半翅目の間にある体表炭化水素成分の違いを多数種で比較した。多くのアブラムシはアリにエサ資源として甘露を提供し、その見返りに天敵から保護してもらう。その際、アリは共生型のアブラムシを正確に認識する必要があり、そのキューはアブラムシの体表面にある炭化水素、中でも分枝アルカンであることがこれまでに分かっている。そこで、分枝アルカンのどのような特徴が識別のキューに用いられているのかを合成したアルカン類を用いて検証した。その結果、アリはメチル基の分枝位置をキューに分枝アルカンを識別していることが明らかになった。栄養分に関しては、アリ随伴性半翅目昆虫の甘露主成分であるメレジトース、スクロースおよび人工甘味料であるスクラロースをアリに与え、生存率と摂食嗜好性を調べた。その結果、アリはメレジトースを与えた際に高い生存率を示し、スクラロースを与えた場合の生存率は低かった。一方、アリの摂食嗜好性はメレジトースやスクロースに比べ、スクラロースで有意に高かった。このことから、アリ随伴性半翅目昆虫の甘露はアリに高い栄養価をもたらすが、アリの摂食嗜好性は栄養価とは異なる基準で決まることが示唆された。昨年度に引き続きアリの随伴行動やガード効率に与える影響をみるため、人工甘露を使う実験をミカンコナカイガラ、パイナップルコナカイガラ、ツヤオオズアリ、寄生蜂系を用い本実験を行ったが、繰り返しが十分ではないた追加データを収集中である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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