研究課題/領域番号 |
16K14879
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有岡 学 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20242159)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セルラーゼ / グルクロン酸エステラーゼ / マンナナーゼ / シロアリおよび共生微生物 / 糸状菌 / バイオマス |
研究実績の概要 |
オオシロアリHodotermopsis sjostedtiの腸内に共生するEucomonympha属原生生物から単離されたcDNAがコードするセロビオヒドロラーゼ (以下EuCBH) の生産を試みた。Aspergillus oryzaeを用いた生産のため、HA-His6タグを付加したEuCBHをα-アミラーゼAmyBとの融合タンパク質として発現させるプラスミドを作製し、形質転換体の菌体および培地画分のタンパク質についてHA抗体を用いたウエスタン解析を行った。その結果、菌体画分においてはAmyBとEuCBHの融合タンパク質の発現が確認された。一方、培地画分についてはNi-NTA樹脂による精製を行ったのち、同様にウエスタン解析を行った。その結果、目的タンパク質のサイズと考えられるバンドが検出された。 また、併行して材食性ゴキブリ由来ベータグルコシダーゼ (PaBG1b)、ヘミセルロースとリグニンの間のエステル結合を加水分解する糸状菌由来グルクロン酸エステラーゼ (GE)、およびシロアリ共生原生生物由来のマンナナーゼの生産も行った。その結果、PaBG1bが高い比活性とグルコース耐性などの優良な性質を持つ酵素であること、ある種の糸状菌GEがこれまで報告のあるGEに比べ高い触媒活性を持つ酵素であることを明らかにした。また、GEについて、基質であるグルクロン酸の4-O-メチル基の認識に重要な役割を果たすと考えられる残基の同定に成功した。マンナナーゼについては、サブサイト-5付近に保存されたトリプトファン残基の変異によってkcat値に大きな変化はないものの、Km値が大幅に上昇すること、すなわちこの残基がサブサイト-5における糖の認識に関わることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EuCBHについては発現系の構築が順調に進んでいる。また、生産に成功した他の酵素については、優良な性質を持つことや基質認識機構が明らかになるなどの新知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きシロアリおよびその共生微生物、また糸状菌由来のバイオマス分解酵素の生産と性質の解析を行う。GEやマンナナーゼについては必要なら構造解析を行う。また、これらを組み合わせて実バイオマスの分解系の構築を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
EuCBHの生産が途上であり、酵素活性の確認に必要な基質や試薬類を次年度に調達する必要が生じたため。また、GEやマンナナーゼの解析が予想外に進展し、構造解析を行う可能性が考えられたため、その分の経費を見込んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
EuCBHの生産と精製の進行具合を勘案しつつ基質や試薬類を発注する。また、GEやマンナナーゼの構造解析を行う場合は、新たに必要になる器具・試薬類を適宜調達する。
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