研究実績の概要 |
タカサゴシロアリ腸内共生細菌由来のキシラナーゼNtSymX11については、本年度中に投稿論文を作成・投稿し、Carbohydrate Research誌に掲載された(Carbohydr. Res. 474, 1-7 (2019))。併行して下等シロアリCoptotermes formosanusの腸内に共生する原生生物Holomastigotoides mirabile由来のキシラナーゼであるCfXyn11-3Aの生産、精製、および酵素学的性質の解析を行った。CfXyn11-3Aはこれまで上記シロアリの腸由来抽出物から精製されており、高い比活性を持つことがわかっていたが、微量しか得られていなかったため、今回組換えタンパク質としての生産を試みた。まず予想成熟体部分を大腸菌を用いてHisタグ付きで生産したが、不溶性画分に認められた。そこでTrigger factorを付加して低温で発現誘導したところ、可溶性画分への生産に成功した。精製タンパク質を用いて活性を測定したところ、本酵素がブナ由来キシランを分解するキシラナーゼ活性を示すこと、生成物がキシロトリオース等であることがわかった。しかし比活性はシロアリ腸抽出物由来の酵素に比べかなり低いことがわかった。この原因が大腸菌菌体内でのフォールディングエラーである可能性を考え、出芽酵母を用いた発現を行った。発現には分泌タンパク質であるαファクターのシグナルおよびプロ配列をキャリアに用いた。しかし、生産されたCfXyn11-3Aの大部分は不溶性画分に認められ、微量生産された可溶性タンパク質を用いても活性の検出には至らなかった。しかし、不溶化したタンパク質が後期ゴルジ体でのプロ配列の切断を受けていることが示唆され、不要化が小胞体ではなく、ゴルジ体以降のオルガネラで起こるという、これまでの常識とは異なる知見が得られた。
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