研究実績の概要 |
超好熱性アーキアAeropyrum pernixが特異的に生産する、C25,C25アーキオールコアを持ったイソプレノイド膜脂質の生合成経路の解明に成功した。その過程において、新奇な2つのプレニル基転移酵素と1つのプレニル基還元酵素の同定を行なっている。それらの酵素はいずれもC25炭化水素鎖を有するアーキア膜脂質の前駆体に対し、一般的なC20炭化水素鎖を持つ前駆体に対するよりも高い特異性を示した。それらの酵素の遺伝子に加えて、必要なアーキア酵素の遺伝子をプラスミドを用いて大腸菌に導入し、バクテリア細胞内でのC25,C25アーキオール型アーキア膜脂質の生産に初めて成功した。同脂質は強靭な膜を形成することが知られており、大腸菌の細胞膜に対する影響に興味が持たれる。 また、アーキア膜脂質の大腸菌細胞における生産量の向上とそれによる表現系の明確な変化の観察を目指し、同脂質の前駆体供給経路であるメバロン酸経路をCRISPR/Cas9システムを用いて大腸菌ゲノムに挿入した。しかし、一部酵素の活性が低いなどの問題が生じ、プラスミドを用いた導入方法に比べて低い生産量しか達成されなかった。ゲノムにおける挿入部位などの再検討が必要だと思われる。一方、プラスミドを用いた手法では、最近我々が見出した新奇な変形メバロン酸経路や、それを人工的に改変した経路の導入を試みることでイソプレノイド生産量を向上させることに成功している。今後アーキア膜脂質の生産向上への応用を図る予定である。
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