1. 葉上におけるC1酵母ストレス顆粒形成の生理的意義の解明 前年度に引き続き、本酵母の葉上生育に重要な役割を果たすことが予測されるいくつかのストレス応答因子について、細胞内動態や遺伝子破壊株の表現型解析を進めたところ、浸透圧応答に関わり、真核生物に広く保存されているMAPキナーゼであるHog1のC1酵母Candida boidiniiにおけるホモログCbHog1が、高温ストレス時にストレス顆粒(SG)に局在することを見出した。またその局在にはCbHog1のN末端βシート構造領域が必要かつ十分であり、SGへのHog1の局在はそのアミノ酸配列によって規定されていることを明らかにした。さらにSGに局在しない変異体や不活性型の変異体を用いた解析により、高温ストレス時のCbHog1のSGへの隔離が、Hog1活性の抑制制御に寄与していることを明らかにした。 2. 葉上で日周変動するメタノール濃度をC1酵母が認識するメカニズムの解明 前年度に引き続き、C1酵母Pichia pastorisのメタノール誘導性遺伝子発現におけるメタノールからのシグナル伝達に関与する新規因子として見出した細胞膜センサータンパク質(Wscファミリータンパク質)の機能解析を行った。Wscファミリータンパク質の下流のシグナル伝達にはcell wall integrity (CWI) 経路があるが、CWI経路中のキナーゼタンパク質の変異体を用いた解析により、メタノール誘導性遺伝子発現に関わる転写因子には、CWI経路の途中から分岐する新規経路によってシグナル伝達されることを示唆する結果を得た。
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