研究実績の概要 |
回遊性魚類の腸管より採取された Shewanella sp. HM13 は、菌体外に直径約 50 nm の膜に覆われた粒子を生産する。このような細菌が生産する粒子は、菌体外膜小胞 (EMV) と呼ばれており、細菌間、細菌-宿主間コミュニケーションツールとして機能することが知られている。さらに、本菌の EMV には機能未知のタンパク質 P49 が、単一の積荷タンパク質として含まれていたことから、本菌は P49 選択的な小胞輸送能を有していることが明らかとなった。本研究では、本菌の積荷タンパク質選択的な EMV 輸送能を応用することで、EMV を介した異種タンパク質分泌生産系の開発を試みた。積荷タンパク質 P49 をコードする遺伝子の 3’ 末端に緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子 (egfp) を相同組み換えにより導入し、eGFP 融合型 P49 生産株を構築した結果、融合型タンパク質は細胞質画分と EMV 画分より検出され、EMV を除去した培養上清画分 (Post-vesicle fraction, PVF) からは検出されなかった。以上の結果は、P49 の C 末端に目的のタンパク質を融合することで、EMV を介した分泌生産が可能であることを示している。また、成熟型 P49 には既知の膜移行シグナル配列や表層多糖結合ドメインといった機能ドメインは見いだされなかった。一方で、C 末端領域に 2 つの疎水性領域が存在していた。本研究では、P49 選択的な EMV 輸送に関与するドメイン領域を決定するために、P49 の C 末端領域を欠損した変異型融合型タンパク質を発現する株を構築した。その結果、2 つの疎水性領域の内、より C 末端側に存在する疎水性領域の欠損は、eGFP 融合型 P49 の EMV への移行を顕著に阻害することが明らかとなった。
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