われわれは、バクテリアをリゾチーム処理したスフェロプラストをペニシリンGを含むマリン培地でインキュベーションすることによって、細胞を巨大化させている。好気性光合成細菌Erythrobacter litoralisおよび通性嫌気性光合成細菌Rhodospirillum rubrumのスフェロプラストの巨大化における光と酸素の影響を調べた。通常、E. litoralisは酸素がない状況では光合成を行わないにもかかわらず、そのスフェロプラストは酸素がない状況でも光だけで巨大化した。他方、R. rubrumのスフェロプラストは酸素も光照射もない状況でも巨大化することから、嫌気呼吸を行っていると考えられた。放射線抵抗性細菌Deinococcus grandisのスフェロプラストを巨大化したところ、その最大サイズは肉眼で見える大きさである直径400マイクロメートルに達した。このスフェロプラストの巨大化は通常Deinococcusの培養に使用されるTGY培地では生じないが、マリン培地では生じたことより、マリン培地における金属塩が巨大化に関係していると考え、実験したところ、本スフェロプラストの巨大化にはマグネシウムイオンあるいはカルシウムイオンとナトリウムイオンの双方のいずれかが必要であることを明らかにした。腸内細菌科に属するLelliottia amnigenaの巨大化スフェロプラストの内膜に対して弱くフェムトチップを接触させ、そこに青色蛍光タンパク質を含む溶液を注入したところ、細胞膜で覆われた独立した液胞様構造体をつくることに成功した。内部が青色蛍光を示したことより、スフェロプラストの細胞膜がエンドサイトーシスを生じた結果つくられたと考えられた。
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