植物は多様な代謝物を根から土壌中に放出し、その量は光合成産物の10~40%を占める。根から分泌される代謝物の中にはダイズのフラボノイドのように根圏での生物間コミュニケーションのシグナル分子として機能するものも多く知られている。 カフェインは私たちの生活に最も身近な植物二次代謝産物の一つである。カフェインのヒト体内での代謝機構や生理活性は良く知られているが、コーヒーノキ根から根圏土壌に大量に分泌されるカフェインについてはこれまで無視されてきた。本研究では、独自の形質転換体を用いて、根圏でのカフェインの分解経路の解明と生物間相互作用における役割の解明に取り組む。 今年度はコーヒーノキ幼苗を用いて、発芽時のカフェイン合成系遺伝子(CaXMT1、CaMXMT1、CaDXMT1)の発現解析とカフェインやテオブロミン、テオフィリンの分泌量の変動を調べた。また、カフェインの根圏での分解動態を解析したところ、コーヒーノキ根圏ではコーヒーノキを栽培していない土壌と比べて顕著にカフェイン分解活性が高いことが示された。オートクレーブした土壌ではカフェインは分解されず、微生物によるカフェイン代謝が示唆された。さらに、この根圏土壌を培養し、カフェイン分解菌を単離した。 生物間相互作用におけるカフェインの機能を解析するためカフェイン生合成系の遺伝子群を導入した形質転換トマトを作出した。形質転換トマトにおける遺伝子の導入を確認し、カフェインの蓄積も検出した。
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