研究課題/領域番号 |
16K14902
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村岡 未彩 大阪大学, 薬学研究科, 特任助教(常勤) (00707614)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カドミウムバイオセンサー / 検出感度 / 環境基準値 |
研究実績の概要 |
本研究は、主にカドミウム(Cd)によって強く活性化される高等植物由来フィトケラチン合成酵素(PCS)をセンサー素子として、多様な有害重金属の検出が可能な高感度バイオセンサーを開発することを目的としている。 これまでに我々は、酵母に表層提示したPCSを素子とした場合に0.02 mg/Lのカドミウムを検出できることを明らかにしているが、環境水のモニタリングに適用するためには、0.003 mg/Lの感度が必要となる。そこで、酵母表層提示PCSに代わり、精製組換えPCSを用い、感度の向上を目指した。精製酵素は、Arabidpsis thaliana由来のAtPCS1を発現させた大腸菌からHis-tag精製法により調製した。本酵素を用いて、カドミウム存在下、基質となるグルタチオン(GSH)を添加し、合成されたフィトケラチン(PC)をHPLC分析で定量することにより、検出感度を指標として反応条件の最適化を行った。 その結果、精製AtPCS1を2 mM EDTAで処理することにより感度が上昇し、約0.001 mg/Lのカドミウムの検出に成功した。さらに、精製AtPCS1の保存安定性や他種金属イオンとの交差性を調べ、また酵素反応の最適化を図った。その結果、精製AtPCS1をセンサー素子として用いることにより、環境基準濃度のカドミウムが検出できることが示された。本センサーは、機器分析に代わる簡便かつ安価な環境水モニタリング法として有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、主にカドミウム(Cd)によって強く活性化される高等植物由来フィトケラチン合成酵素(PCS)をセンサー素子として、多様な有害重金属の検出が可能な高感度バイオセンサーを開発することを目的としている。 平成28年度は、これまで研究を行ってきた酵母表層提示PCSに代わり、精製AtPCS1を用いて反応条件の最適化を行った結果、検出感度の向上に成功し、環境水のモニタリングに適用可能であるこが示された。これにより本研究の目的のひとつである高感度化についてはおおよそ達成できたと言えるが、もうひとつの目的である多様な有害重金属の検出についてはまだ準備段階である。なお、検出感度の向上については現在論文投稿の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、高感度かつ多様な有害重金属の検出が可能なセンサー素子の作成を目的とする。 まずは既にアミノ酸配列が明らかとなっている数種の生物のPCSについて精製組換えPCSを入手し、酵素学的解析を行う予定である。その後、これらのPCSの推定立体構造をもとに、立体構造と重金属特異性の関連性について解析を行う。得られた情報をもとに、遺伝子改変を行ったPCSを用いて種々の重金属による活性化の強さを比較評価することにより、様な重金属を検出可能なPCSの作成を行う予定である。さらに、平成28年度の成果をもとに反応条件の検討を行い、高感度かつ多様な有害重金属の検出が可能な実用性の高いセンサー素子の作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は予定していた遺伝子改変実験を行わなかったため、DNAコンストラクトに必要な分子生物実験試薬類を一部購入しなかった。平成29年度には平成28年度に実施しなかった遺伝子改変実験も行う予定としているため、平成29年度に使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
400千円を分子生物実験試薬類及び酵素活性試験試薬類として計上した。内訳は遺伝子改変に必要な酵素や培地、重金属特異性解析のための重金属等試薬である。また、その他経費として1200千円を計上した。その内訳は各種PCSの入手のための遺伝子合成委託費及び、論文投稿の費用である。さらに研究代表者と研究に従事する大学院生の学会発表のための旅費としてそれぞれ100千円ずつ計上した。
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