前年度,タバコモザイクウイルス(TMV)のサブゲノムプロモーター(SGP)下の標的タンパク質が僅かに発現されていることが示唆された。そこで(1)ウエスタンブロッティング(WB)による標的タンパク質の検出,(2)TMV由来RNA複製関連酵素(RdRp)の発現確認について検討した。(1)としてSGP下の蛍光タンパク質に融合発現させたHis6-tagを利用してWB解析を行ったところ,蛍光タンパク質の分子量に一致するバンドが特異的に検出された。SGP下の標的タンパク質が発現されていることから,RdRpが機能していることが期待された。そこで(2)としてRdRpのN末端にHis6-tagを導入し,126 kDaおよびそのリードスルー産物である183 kDaのRdRpをWBで検出しようと試みた。しかし,発現を検出することはできなかった。宿主酵母による不適切な糖鎖付加の影響が懸念されるため,RdRp配列中にあるシークオン配列(N-結合型グリコシル化配列)を置換した変異体を作製した。6か所あるシークオン配列をそれぞれ置換した変異体,全てを置換した変異体を作製したがRdRpの発現は確認できなかった。SGP下の蛍光タンパク質の発現にRdRpが関与しているのかを確認するためにRdRpのメチルトランスフェラーゼドメインまたはヘリカーゼドメイン内に終始コドンを導入した変異体,ヘリカーゼとRNAポリメラーゼドメイン間にあるリードスルー終始コドンをTAC (Tyr)に変更した変異体を作製した。これらを野生型RdRpと置換してTMVゲノムに組み込みSGP下の蛍光タンパク質の発現を確認したが,顕著な差は見られなかった。このことからRdRpに関係なくSGP下の蛍光タンパク質が発現されていることが示唆された。現在,SGP下の標的タンパク質の発現にかかわる因子について酵母遺伝子欠損ライブラリーを用いて検討している。
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