研究課題
高脂肪食の摂取により胆汁酸分泌が増大し、肝臓で合成される一次胆汁酸は加齢によりコール酸に偏る。加齢に伴う高脂肪食摂取で増加する状態をコール酸添加食で模倣してラットに与えると、炎症や繊維化をともなわない肝臓での脂質蓄積などの症状を惹起することを見出した。LC-MSを用いて、各組織や血液中には多様な胆汁酸分子種が観察される。そこで、胆汁酸や関連化合物と当該病態の発症との関連を明らかにすることを目的とし、生活習慣病発症におけるこれらの寄与を併せて検証した。消化管内容物や糞での胆汁酸組成をモニターすることにより、小腸内で生じるタウリンおよびグリシンによる抱合体の脱抱合や、主に大腸で起こる二次胆汁酸の生成が遅滞しない程度のコール酸負荷量を決定した。このコール酸負荷条件において、回腸内容物ではタウロコール酸、盲腸内容物や糞ではデオキシコール酸、肝臓・腎臓ではタウロコール酸とコール酸、門脈血中ではタウロコール酸が主要な胆汁酸であった。加えて、盲腸内容物ではげっ歯類に特徴的な胆汁酸分子種であるβ-muricholic acidだけでなく、5β-cholanic acid-12α-ol-3-oneや5β-cholanic acid-3α,12α-diol-7-one、5β-cholanic acid-3α-ol-12-oneなどのコール酸から派生する胆汁酸の有意な増加が観察された。肝臓での脂質蓄積にはタウロコール酸とコール酸、消化管透過性とにはタウロコール酸とデオキシコール酸が寄与する可能性が示された。本研究から、加齢に伴う摂取エネルギー過多により増加する内因性の胆汁酸であるコール酸が腸肝循環に関わる肝臓および消化管に現れる症状に積極的に関わる可能性が示された。
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