研究課題/領域番号 |
16K14918
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原 博 北海道大学, 農学研究院, 教授 (70198894)
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研究分担者 |
比良 徹 北海道大学, 農学研究院, 講師 (10396301)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 難消化性糖質 |
研究実績の概要 |
難消化糖質として難消化性デキストリン、ならびに「自然界にその存在量が少ない単糖とその誘導体」と定義される希少糖の一つであるD-アルロースのGLP-1分泌促進作用を検討した。D-アルロース、難消化性デキストリン、デキストリンをそれぞれ覚醒ラットに経口投与後、経時的に採血を行い、血漿中のグルコース、GLP-1濃度を測定した。その結果デキストリン投与では、GLP-1分泌は亢進されず、難消化性デキストリン投与で60分以降にGLP-1分泌の亢進が見られた。さらにD-アルロース投与により早期から持続的なGLP-1分泌亢進が見られた。血糖値はデキストリン投与で大きく上昇したが、D-アルロース投与は上昇しなかった。 D-アルロースのGLP-1分泌促進作用は、末梢血だけでなく、門脈からの採血でも確認された。さらに、D-アルロースを麻酔下ラット腸管に直接投与したところ、下部小腸(回腸)に投与した方が、上部小腸(十二指腸)に投与した際よりも強くGLP-1分泌を誘導した。 マウス大腸由来GLP-1産生細胞GLUTagを、D-アルロースに暴露したところ、GLP-1分泌促進は見られなかった。このことから、in vivo試験で見られたGLP-1分泌促進作用は、GLP-1産生細胞への直接作用によるものではない可能性が考えられた。GLP-1産生細胞とは異なる細胞がD-アルロースを認識して、何らかの細胞間情報伝達を介してGLP-1産生細胞を活性化する可能性や、腸管腔内の何らかのGLP-1分泌阻害因子の作用をD-プシコースが解除することでGLP-1産生細胞が活性化される可能性なども考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
希少糖D-アルロースの強力なGLP-1分泌促進作用を見出すことができたが、GLP-1産生細胞での直接作用が確認されていない。細胞レベルでの解析が進んでいない点において、やや遅れていると判断した、
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今後の研究の推進方策 |
GLP-1産生細胞での作用が見られなない点については、単離腸管粘膜細胞や、他のGLP-1産生細胞株での試験を検討する。また、細胞レベルでの解析だけでなく、組織レベルで解析することで、これら糖質の作用メカニズムを明らかにする。引き続き、以下の試験を実施する。消化管内分泌細胞株における細胞内情報伝達経路の解析、遺伝子発現解析による受容体候補の探索、動物組織での受容機構解析、難消化性糖質の投与経路(経口、大腸)別の作用の比較解析
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