研究課題
本研究の目的は、生体内エネルギー状態に応じた遺伝子発現の制御機構を理解することにあり、特に、エピゲノムレベルでの制御の可能性を検討する。具体的には摂食時に発現が上昇する遺伝子に関して、転写因子の活性制御だけでは説明のつかない遺伝子に着目し、ヒストンアセチル化やメチル化等のヒストンコードやDNAメチル化状態について解析を行う。はじめにマイクロアレイを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行い、その結果を用いてエピゲノムレベルでの解析を進めた。絶食・再摂食で発現が顕著に変化する遺伝子の探索を行うために、オスの7週齢C57BL/6Jマウスを①自由摂食群、②24時間絶食群、③24時間再摂食群(24時間絶食後、24時間再摂食させた群)、④48時間再摂食群(24時間絶食後、48時間再摂食させた群)の4群に分けて検討を行った。その結果、再摂食時に発現が上昇した遺伝子にはSREBP-1cの標的遺伝子が、一方で発現が減少した遺伝子の中にはCREBやPPARαの標的遺伝子がそれぞれ含まれており、これまでに報告されている絶食・再摂食時に観察される転写因子の活性上昇が確認された。また、再摂食時に発現が上昇した遺伝子を分類したところ、2つのパターンに分けられた。一つは、②24時間絶食群と比較して、③24時間再摂食群で遺伝子発現が上昇し④48時間再摂食群で変化がなくなった一過性のもので、もう一つは発現が③24時間再摂食群、④48時間再摂食群で持続的に発現が上昇したものである。一方、再摂食時に発現が低下した遺伝子の場合でも同様に2つのパターンに分けられた。いくつかの遺伝子領域のヒストン修飾を検討したところ、遺伝子発現パターンとヒストンアセチル化レベルの相関が観察される領域とされない領域に分かれた。今後さらに、エピゲノムレベルでの制御を解析していく予定である。
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