食物繊維の血糖低下作用は種類により程度に違いがあり、各食物繊維の作用機序には独自の分子機構があることが示唆される。本研究では食物繊維であるグルコマンナンに着目し、その血糖低下作用の特異的メカニズムを明らかとすることを目的とした。 メカニズムとして膵アミラーゼ (PA)とスクラーゼ・イソマルターゼ (SI)の相互機構にグルコマンナンが影響を与えることを想定し、前年度までにマウスを用いたin vivoの検討を行ったが、グルコマンナン負荷による小腸粘膜のPA局在やSIのマルトース分解活性には変化が見られなかった。一方食品マンナンについては、Bacteroides属の腸内細菌がマンナンを優先的に栄養源として利用すること、マンナンが腸内のBacteroides属の菌数を増加させ血中コレステロールを低下させることなどが報告されている。そこで本研究ではBacteroides属の関与についても検討を行った。 前年度はマウスマクロファージ細胞株Raw264細胞を用い、腸内のBacteroides属主要菌株であるBacteroides fragilis (B.fragilis)の炎症誘導作用を検討した。その結果、B.fragilisの内毒素が、同じくグラム陰性桿菌であり強い炎症誘導作用を有するEscherichia coli (E.Coli)の内毒素に対して拮抗する可能性を見出した。そこで本年度はさらにそのメカニズム解析を行い、B.fragilisの内毒素が、E.coliの内毒素によって活性化されるNF-kBを量依存的に抑制すること、またヒトマクロファージ細胞株THP-1においても同様の効果を発揮することを明らかとした。一方でマウスへのグルコマンナン経口投与予備試験では腸内細菌叢には有意な変化が認められなかった。このため今後は既報などを参照し、投与量や期間を変更して検討を行う予定である。
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