研究課題/領域番号 |
16K14927
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河田 照雄 京都大学, 農学研究科, 教授 (10177701)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタボロミクス / メタボローム解析 / 機機能性食品成分 / 健康寿命 / 食品代謝機能学 |
研究実績の概要 |
近年の健康意識の高まりに伴い、国内外において機能性食品成分に関する研究が数多くなされてきている。しかし、その機能面に関して盛んな研究が行われている一方で、機能性食品成分の体内動態に関する研究は ほとんどなされていない。機能性食品素材の体内代謝物の把握および活性解明は、より効果的な摂取条件の決定のみならず、安全性面においても重要であり、より強固な科学的エビデンスに裏付けられた機能性食品成分の開発においては必須の検討項目である。一方、分析技術の急速な発達に伴い、メタボローム解析技術による化合物の網羅的解析が可能となった。 さらに近年、食品機能に関する研究がヨーロッパを中心として世界各国で広く行われており、多くの機能性食品成分が同定されている。これらの食品成分に関する研究は、多くの場合、機能面にのみ焦点が当てられており、体内動態に関する研究は単一成分のみに限られている場合がほとんどである。一方で、分析技術の発展に伴いメタボローム解析による化合物の一斉検出・同定技術が急速に高まってきている。しかし、機能性食品成分研究におけるメタボローム解析の導入はほとんどなされていない。 本研究ではこのような食品機能研究の現状を鑑み、機能性食品成分の体内動態解析・作用機構 解析におけるメタボローム解析技術の有用性を明らかにし、機能性食品研究におけるメタボローム解析導入のモデルケースを確立することを目的とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
摂取した食品成分には、消化管内で腸内微生物によって代謝変換された後、体内に吸収されるものもあれば、肝臓など末梢組織で代謝変換を受けるものもある。従って、食品成分は摂取後、元の食品成分とは異なった化合物へ変換され、体内で作用していることが想像される。また、代謝変換活性も、体内環境によって変動する可能性も高い。にもかかわらず、従来の食品機能性研究は、機能性食品成分の元の形態(一次形態)でのみ議論されることが多く、それらの腸管内を含めた生体内代謝物(派生物)の生理活性について系統的に研究されることはほとんどなかった。その主たる要因は3点あると考えられる。1点目は、代謝物解析の主たる分析機器であるLC-MSの精度と感度の性能の問題である(ハード系課題)。2点目は、分析データを迅速に正しく解析できるバイオインフォマティクス担当の人材の問題である(情報解析系課題)。3点目は、対象とすべき健康機能性の評価系の問題である(機能性評価の課題)。ハードに関しては、近年の技術革新が著しく、現在では実施者らの計画を実現するまでのスペックとなっている。一方、情報解析系課題の人材に関しては、国内外の食品関連研究機関において、目的を達成するためのバイオイオインフォマティクスを担当できる人材が極めて少ない。しかしながら、本研究で当該人材を育成し、本計画を実現できるレベルまで到達した。これらの理由により上記の進捗状況区分の判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、実施者らが提唱する解析モデルの導入が機能性食品研究において有用な手法となりうるか否かを、肥満・糖尿病に対する既知の機能性食品成分である、1.日本食において主要な役割を果たす「麹食品由来成分」および「レスベラトロール」、「β-クリプトキサンチン」を解析対象として取り上げ検討する。 方法としては、各成分に関する抽出・分析条件を最適化した後、安定同位体ラベルした成分をマウスに投与、採血し、得られたサンプルをメタボローム解析に供する。検出された成分代謝物の組成式情報について、データベース (KEGG, KNApSAcK, LIPID MAPS 等) を活用し、化合物の推定を行う。さらに、種々の条件下で成分を投与した血液や骨格筋などの臓器を採取した後、メタボローム解析に供し、データを取得する。投与条件としては、絶食時間や投与時間、投与期間および投与形態について検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
化合物同定に関する実験・分析・解析費用が当初想定内に収まった点、および論文作成に関する費用(英文校正等)および研究成果を発表する学会参加等の旅費が次年度以降にずれ込んだことが主たる要因である。
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次年度使用額の使用計画 |
当該助成金および翌年度分請求助成金を合わせ、動物試験系の構築、およびそれを用いた機能評価に重点的に使用する予定である。さらに研究成果として、論文諸費用(英文校正)の学会発表諸費用(出張旅費等)に使用する予定である。
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