研究課題
本研究は「難吸収性食品成分が有する機能性の統合的理解を目指した評価モデルシステム」を構築し、その有用性を確証すること目標として、膜マイクロドメインを構成する要素の組成変化を誘導する食品成分を探索し、同定膜マイクロドメインを修飾する食品成分がインスリンシグナル伝達に与える影響明らかにしようとした。本年度の成果を以下に示す。1) 膜マイクロドメイン構成要素の組成変化を誘導するmethyl-β-cyclodextrin(MβCD)を処理した大腸がん細胞を用いて、密度勾配遠心分離法による膜マイクロドメインの分画、脂質画分のTLC分析により、膜マイクロドメインからのコレステロール低下作用を確認できたことから、膜マイクロドメイン脂質組成分析法を確立した。2) インスリンシグナル伝達を修飾する食品成分として、アブラナ科野菜に由来するbenzyl isothiocyanate(BITC)を同定し、BITCがインスリン非依存的にphosphatidylinositol 3-kinase及びAktのリン酸化を誘導し、大腸がん細胞の生存経路を活性化することを見出した。3) 膜マイクロドメイン修飾成分のインスリンシグナル伝達への影響を、MβCDを用いて評価した。その結果、MβCDは、BITCが誘導するAktのリン酸化を、膜マイクロドメインのコレステロール低下作用を介して抑制することを明らかにした。4) インスリンシグナル伝達を修飾する食品成分として、ケルセチン配糖体代謝物を同定し、それらの生体内抗酸化作用を評価した。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の交付申請書に記載した計画のうち、1)膜マイクロドメイン脂質組成分析法の確立、2)BITCが大腸がん細胞のインスリンシグナル伝達経路を活性化することを見出した、3)MβCDが膜マイクロドメインのコレステロール低下作用を介してインスリンシグナルを抑制することを見出した、などの成果を得ている。
平成29年度は次の二点を中心に進める。1) 膜マイクロドメイン脂質組成及び構造修飾の分子機構:膜マイクロドメインの可視化をfilipinを用いて行い、食品成分単独による膜マイクロドメイン修飾、或いは薬剤誘導破綻に対する抑制効果について直接的な確証を得る。また、膜マイクロドメインと相互作用する食品成分は、HPLCまたはLC-MSを用いて検出・定量を試みる。本法で検出が困難な場合は、表面プラズモン共鳴または等温滴定型カロリメーターを用いて、食品成分と膜マイクロドメインとの相互作用を確認する。2) 膜マイクロドメインタンパク質修飾機構:食品成分によるタンパク質修飾は、SDS-PAGEで分離したタンパク質を各種プロテアーゼ消化後、LC-TOF-MSに供し、得られた質量情報をMascot databaseなどを用いて同定する。
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Food Res. Int.
巻: 89 ページ: 716-723
http://doi.org/10.1016/j.foodres.2016.09.034