研究課題/領域番号 |
16K14929
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片倉 喜範 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50264106)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳腸相関 / エクソソーム / 神経細胞 / 腸管上皮細胞 |
研究実績の概要 |
近年、脳と腸が密接に関わり影響を及ぼし合う「脳腸相関」という概念が注目されている。当研究室ではこれまでの研究で、食肉成分であるカルノシンが認知機能改善効果を示し、脳腸相関活性化能を有することを明らかにしている。そこで、カルノシンによる脳腸相関活性化の分子基盤として様々な分泌系因子やエクソソームを想定し、その寄与を明らかにすることを目的として研究を行った。 腸管モデル細胞として、ヒト結腸癌由来細胞株であるCaco-2細胞を用いた。各種分泌因子の発現は、real time PCR法を用いて検証した。カルノシン処理をしたCaco-2細胞の培養上清から、Exoquickを用いてエクソソームを単離し、エクソソーム内のmiRNAの発現変動をマイクロアレイを用いた網羅的解析により行った。Caco-2培養上清及びエクソソームの機能性は、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いて検証した。 カルノシン処理をしたCaco-2細胞においては、神経栄養因子(BDNF、GDNF)、摂食調節因子(ADM、CCK、NMU)、循環器系制御因子(EDN1、EDN2、APLN)、ストレス応答因子(UCN),神経系制御因子(OSM、FGF9)の発現が優位に増強していることが明らかとなった。 次に、カルノシン処理をしたCaco-2細胞由来のエクソソームmiRNAの発現変動を解析した結果、カルノシン処理により発現変動を示す10種類のmiRNAを同定した。これらmiRNAのターゲット遺伝子をTargetScanによりについて予測したところ、神経管の形成・発達、神経伝達物質の分泌・輸送、ニューロンの発達・分化、軸索の誘導といった、神経細胞の分化・成熟に関わる遺伝子が多く含まれていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、腸管から分泌されるエクソソームの単離同定、及びその機能性検証で終わることが予想されたが、その予想をはるかに上回り、腸管から分泌されて、神経細胞を活性化しうるエクソソームの同定とその機能性検証、そのエクソソームに含まれるmiRNAの同定、さらにそのmiRNAのターゲット遺伝子の同定を行うことができた。つまりこの研究により、脳腸相関活性化効果を有するカルノシンの機能性の分子基盤として、ここで同定されたエクソソームとそこに含まれるmiRNAを想定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、カルノシンの脳腸相関活性化効果を担う因子としてのアンチエイジングエクソソームの機能性を、マウスを用いたin vivo実験により明らかにしていく予定である。さらに、腸管から分泌されるアンチエイジングエクソソームのターゲット組織として、腸管神経を想定し、腸管由来のエクソソームによる腸管神経活性化を介した脳機能改善の可能性を明らかにしていきたいと考えている。 また、記憶減退及び回復、神経変性疾患に対する本エクソソームの寄与に関しても、その動態解析・機能性解析を含めて明らかにしていきたいと考えている。
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