研究実績の概要 |
食は世界に誇る日本文化の象徴であるが, 保守的である。新次元食品産業を開拓するためには, 一般的でない食材も積極的に発掘・活用する必要があるが, 製品化のためには安全性を確実に保証する必要がある。そこで極めて美味だが危険なフグ肝をモデル食品として, テトロドトキシン (TTX) 類毒素をオンサイトで検査できるシステムを開発する。小型なマイクロチップを用い, 化学分析による各毒素の直接定量などを実現し, 養殖フグ肝の食品産業化を支援しつつ, 将来的には各種危険物質に対する迅速検査システムを標準化し, 新次元食品開発スキームを確立することを目指す。 2016年度は主にミクロスケール電気泳動におけるTTXの分析可能性について検討を行った。キャピラリー電気泳動 (CE) はマイクロチップのような小さなデバイスであっても高い分離能を持って様々な分子を分離・検出できる手法であり, アミノ基を有するTTXのような電荷を持った化合物の解析に適している。まず最初にCE-質量分析 (MS) を用い, TTX分析条件の最適化を行ったところ, 10%酢酸などの酸性条件において最も効率的な分離・検出が可能であった。検出限界は5.3 amol (濃度にして5.3 nM) と極めて良好であり, 今後開発するチップ分析システムの検証に十分利用できることを確認した。 つづいて実際のフグ肝を用いて分析を行った。現場での利用を想定し, 2mm程度の肝片から直接TTXを回収するシステムを開発し, CE-MSで解析を行ったところ, 濃縮などの前処理操作なく簡便・迅速にTTXを測定できることを確認した。 今後CE-MSからマイクロチップ電気泳動システムへの移行を進め, 現場解析が可能なシステムを完成させる予定である。
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