研究課題
植食性昆虫による食害は森林の新葉生産量の約 15%を占め,地表付近のオゾン(以下 O3)や変動環境下での虫害発生メカニズムの解明は,今後の樹林地保護管理の課題の1つである。開放系 O3暴露施設ではカバノキ科のスペシャリスト昆虫であるハンノキハムシ成虫による食害は対照区と比べ O3区の夏葉で減少した。特に,O3区ではハムシ類の産卵や幼虫も見られなかった。一方,O3区の葉では防御物質量が低下し植食者の良質の葉になった。この矛盾した結果から,葉の形質以外による虫害制御が想定された。そこで葉形質以外の要因としてBVOC(生物起源揮発性有機化合物:香り成分、O3の前駆物質)に着目した。花や葉から放出されたBVOCを昆虫はこの成分を感知して宿主植物の位置を知る。測定には1本のシュートをテフロン製の袋で覆い、袋内に放出される BVOC を採取管へ吸着させ分析した。モノテルペン(MT)はシラカンバが放出する BVOC の主要化合物群,セスキテルペン(SQT)は昆虫ホルモンと構造の似た化合物群である。両化合物群とも昆虫に対して誘因性・忌避性を示すので,これらの放出量・比率に注目した。MT,SQT とも対照区とO3付加区の間で基礎放出速度、組成に有意差はなかった。シラカンバの虫害には葉由来のMT ・ SQT では単独影響はなかった。BVOC によって虫の訪問頻度が増加すれば食害影響増加が想定される。BVOC は葉の傷害によって放出(HIPV:Herbivore Induced Plant Volatile)を見せる。シラカンバではOcimene 系,β-Caryophyllene,α-Farnesene などHIPV が確認された。HIPVシグナルが当該虫に対して忌避性を持つ例や害虫の天敵の呼び寄せに寄与する例は多い。今後、Y字菅試験を駆使し高O3下でのBVOCの挙動に迫りたい。
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北方森林学会
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巻: 25 ページ: -
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