研究課題/領域番号 |
16K14934
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高木 健太郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (20322844)
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研究分担者 |
小林 真 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (60719798)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / 森林土壌 / 針広混交林 / 厳冬期 / 積雪 / シラカンバ / ササ |
研究実績の概要 |
積雪に覆われて温度・水分環境が一定である厳冬期の森林土壌中で,積雪上の気温の変動に反応して二酸化炭素濃度が変動する現象を先行研究において観測した。この原因として,土中の根か微生物が積雪上の環境に反応して活性を変化させている可能性が考えられるが,厳冬期積雪環境下でこのような情報・物質伝達経路は知られていない。そこで本研究では,この変動メカニズムを明らかにすることを目的として,土壌中二酸化炭素濃度を多地点連続観測するシステムを開発し,厳冬期に連続観測を行った。 研究初年度において針広混交林を構成する主要樹種を対象として観測を行ったところ、落葉樹であるシラカンバ林の土壌でのみ,二酸化炭素の変動現象が確認できた。この理由として,シラカンバが地上部から地下部に情報や物質を伝達する機能を有している可能性に加え,シラカンバ林林床で高密度に生育しているササが影響を与えている可能性が考えられた。そこで本年度はシラカンバとササの影響を分離できる実験区を設定した。具体的には,シラカンバ林において,林床のササを刈り払う個体を6本,ササを除去しない個体を6本設定し,計12個体の直下の土壌中二酸化炭素濃度・地温・土壌水分含水率の連続観測を積雪期に行った。 十分雪が積もった12月~3月にかけて,ササ有区、ササ無区ともに地温は1.5~4.5℃の範囲で積雪期の経過とともに緩やかに減少した。土壌水分はササ無区でササ有区よりも有意に多く、積雪期の経過とともに緩やかに増加した。同期間中の土壌中の二酸化炭素濃度はササ無区でササ有区よりも高く、両区において、積雪上の気温の変化に伴う、二酸化炭素濃度の変動が観察された。両処理区で変動が観察されたことから、ササがこの変動に影響を与えている可能性は低く、シラカンバが外気温度に反応して、地下部の呼吸活性を変化させている可能性が高くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の観測でシラカンバ林でのみ得られた、厳冬期積雪環境下の土壌中二酸化炭素の変動を今年度の観測においても確認できたことに加え、林床のササがこの変動を起こしている可能性が低いことを野外実験で検証することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度にあたる30年度においては、今年度冬季に取得した連続観測データを用いて、積雪深度、気温、土壌水分が土壌中の二酸化炭素濃度変動に及ぼす影響について、引き続き詳細な解析を行い、学会等での発表を行う。加えて、シラカンバ樹木の生理活性が冬季も環境変化に対応して変動している検証を、厳冬期の追加観測により行う予定である。
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